ダウン染め直しについて
2020.11.24
皆さん、こんにちは。
皆さんには、「ダウンを家で保管していたら、色あせしてしまっていた」「クリーニングに出した後にダウンが変色していることに気づいた」「ダウンが古い物で退色してしまった」「ダウンを買ったけど色が気にくわないから好みの色に変えたい」「肉親から譲ってもらった大切なダウンを生まれ変わらせたい」等、ダウンの色褪せや変色でお困りした経験はございませんか?
こうなったら着ないで保管しておくか、捨てるかになってしまいますね?でも高い買い物だし捨てたくない、大切な人から譲ってもらったからなんとかまた使いたいと思われている方は多いと思います。
そんな思いに応えるべく、こちらのページではそういったダウンの色あせや変色、退色に対してのお直し方法、染め直しについて詳しく書いておりますので、最後まで見ていただけると幸いです。26年国家資格のクリーニング師が染色について語っていきます。
目次
1.ダウンの変色や退色が起る原因は?
モンクレールはじめ、タトラスやデュベティカ、カナダグース等、ナイロン素材やポリエステル素材は変色しやすいです。特にナイロン素材は変色、退色、色褪せが起りやすく、部分的な症状が多い傾向にあります。ポリエステル素材は部分的と言うより全体的に色あせが出たり、構造上擦れやすい部分で変色が起こりやすくなっております。
それでは、そういった素材で色あせや変色が起ってしまう原因はなんなのか原因を見ていきましょう。原因は主に4つあり、中でもよく起るのが①の紫外線です。こちらは要チェックですので、気をつけて見て見て下さい。
①紫外線
ダウンが色褪せてしまう原因として最も多いのが紫外線による影響です。外を歩いていれば太陽からの紫外線を受け、家の中でも蛍光灯から紫外線を受けます。紫外線は、ダウンの染料を弱める原因でもあるのです。
紫外線の影響を少なくする方法として最初に気を付けていただきたいのは、保管方法です。蛍光灯を使っている部屋でダウンを保管する場合は、まずその光の下に置かないようにしましょう。場所が無い場合は大変ですが、蛍光灯も紫外線を出しています。少しの間であれば問題無いですが、長い間その蛍光灯(紫外線)の下にダウンを置いていると、だんだん色が褪せてきてしまいます。
中でも白のダウンが黄ばんでくるといった症状はよく起こりえます。これは白の染料が紫外線により黄ばんでしまったという状態です。身近な例で言うと、白の車がだんだん黄ばんで来てしまうといった現象と同じです。外に置いている車は紫外線に当たりまくりですので、そういった現象になりがちです。
さらに、この紫外線で弱った状態のダウンが次の項目②の状態が合わさると、さらにダウンの色褪せが進行します。これがもっともダウンを色褪せる原因です。
②汚れた状態で放置
ダウンを汚れた状態で放置しておくと、汚れの成分が空気中の酸素と結びついて酸化してしまい、変色に繋がります。酸化が起こるとダウンへのダメージが大きくなるため、シーズンが終わったら必ず洗うようにしましょう。
※ダウンをクリーニング屋さん又は自分で洗ったが汚れが少し残ってしまっていて、色褪せや退色に繋がるケースも多々あります。しかし、全く洗わない状態で保管するよりはずっとリスクを軽減できます。
③ガス
冬場は寒いと石油系の暖房を使ったり、夏場はミセスロイドなどの防虫剤で虫除けをしたりする方は多いと思いますが、実はこういったガスはダウンにとってはこれも変色や色あせの原因のひとつです。
自動車の排気ガスにも含まれていますが、ストーブやガスコンロが燃焼した際に生じる酸化窒素ガスには、酸化作用や還元作用があります。
ご自宅にあるクローゼットなど、ストーブやガスコンロのガスが溜まりやすい状況で長期間保管していると、「色焼け」が起きやすくなります。ましてやガスは衣類に残留した汗や汚れの水分に吸着されやすい性質を持っています。また、ビニール包装での保管は湿気がこもりやすいため、ガスが吸着されやすく、ガスの通る道を作ってしまうことがあります。
そのため、ガスもダウンの変色や色褪せを起こす原因の大きな一つです。
④石油系溶剤が残っていた
こちらはクリーニング店に出して仕上がってきた後に起る現象です。クリーニング屋さんで扱っている溶剤(石油の一種)の成分が完全に乾ききらずにそのまま返却されてしまい、それが原因で起ってしまう現象です。
これを防ぐには、ダウンクリーニング後に自分でダウンの匂いを嗅いでみましょう。もしこの石油系の液がダウンに残っていれば悪臭を放ちますので、直ぐにわかります。そのため、家にダウンが返ってきたら、直ぐにビニール袋から取り出して匂いを確認するようにしましょう。
2.全体染色ってどんなことをするの?
ダウンの色褪せや変色を何とかしたい場合は、全体つけ込み染色をすることで解決する可能性があります。
例え部分的な色褪せや変色であっても全体を染め変えないとなりません。色褪せや変色は部分的に起こりがちですが、変色箇所と元の色の箇所とで色の差がハッキリしていないことがほとんどです。染める場合は生地の色が大きく関係していますため、緩やかに変わっていく色に合わせて染める色を変えていくことはほぼ不可能と言えるでしょう。また、変色箇所には色が入りにくくなっていることも多く、たとえ部分的に色を入れることに成功したとしても直ぐに色褪せ・変色が表面に出てきてしまいます。
そのため、ダウンの部分的な色褪せであっても全体の変色等であっても全体染め変えでのご対応となります。
この方法、いわゆる染め直しの方法は以下の通りです。かなり時間がかかります。様々な工程がありますので全ては載せられませんが、一部分をお見せしていきます。
①ダウンクリーニングを行う
まずはクリーニングでしっかりと汚れを落としてキレイにしてから染色しないと色がキレイに入りません。汚れた状態の上から色を入れると、次のクリーニング時に生地に入りきらなかった色が汚れと一緒に落ちてしまいます。
そのため、染め直しの行程はクリーニングとセットでなければなりません。ダウンクリーニングをしてから染色の工程へ進むのは鉄則です。つまり、染色のみは受付はできません。
②つけ込み染色する
しっかりと汚れを落としたら、次は染色工程に入ります。
これは生地全体を高温の染色液につけ込む方法で、色褪せた状態の色の上から染色液で染め直すため色がしっかり入ります。しかし、この染め直し方法は高温を使うため、縮みやシワが出る事が多々あります。これは高温染色する上で避けては通れない注意点ですので、そちらをご了承頂いてのご注文をお願いいたします。
素材によるシワの違い
・ナイロン素材は細かなシワが出来やすい
・ポリエステル素材は大きなシワが出来やすい→当社のアイロンでキレイになる可能性が高いですが、シワが残る事もあります。
・ウールは意外と縮まないで染められる→当社で何度か試験を行っておりますが風合いや縮みは高温染めでも起きにくい傾向にあります。※必ずではございません。
③残った染料を落として色止めする
染色後はダウンに余分な染料が残っているため、何度もダウンクリーニングし、残った染料を落としきります。これにはかなり時間がかかります。
その後、色止めをして着用中や次回のクリーニング時に色が出ないように特殊加工を施し、アイロンでシワを伸ばしたら全体染め変えの完了です。
3.ダウン全体染め変えの料金は?
ここまで読んでいただければお察しの方もいるかもしれませんが、ダウンの染め直しをするということは結構大変です。
ダウン全てをつけ込んで高温で時間をかけて煮込みますし、その間、色ムラが出ないようにするため専属の職人がその場を離れることは一切出来ません。しっかり染め終わるまでつきっきりになるわけですから、決してお安い金額で……というわけにはいきません。
お安い料金でダウンを買っている場合は、ダウンの染め直しをすると買った金額より高く付くなんて事が起りますので、下記のダウンの染めなおしの料金をご確認くださいね。それではダウンの染め治しのお値段を見ていきましょう。(ここから更に下には総額の料金が載っておりますので、そちらもみてくださいね。)
ダウン全体染め直し料金:22,500円
ダウンの染め直しは22,500円(税込)です。(2023年3月31日現在の価格)
高いとお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、これより安くは出来ません。たしかに以前はこれより安い時期もありました。しかし、染料代、専属で職人がそのダウンのためだけにつきっきりになって長時間染める行程、その後、ダウンに付いた染料を落としきるために何度も洗いに掛けて色止めと色出しを繰り返し、最後に最も大変なシワになったダウンを長時間掛けてアイロンして伸ばすという大がかりな作業があります。ここまで時間と手間がかかる作業をとても安くは出来ないと今のお値段に落ち着きました。
本来であればお安くお手頃にしたいところですが、どうがんばってもこの価格が現状妥当だと思っております。当社より安いところはあると思いますが、ここまで色止めして、手作業によるアイロンがけをやっているところは無いと言い切れるくらい手間を掛けています。手間という言葉は、あまり良くないかもしれませんが、これも一重に高品質な状態でダウンクリーニング・染めを完成させたいという思いがあってのことです。
安くてそれなりの品質よりは、料金をしっかりいただいて良い品質のものをお出ししたいというのが当店の思いです。
ダウンの染め変えの総額はいくら?
ダウンの染め変えはクリーニング代と色染代がそれぞれかかります。ダウンの染め変えだけしてもクリーニングをせずに染め変え、汚れた衣類の上から色を塗ることになり、せっかく染めても色がすぐ抜けてしまうといった現象が起ってしまうため、ダウンの色直しのみはお受け出来かねます。例え、1度クリーニングしていると言われても、当社でダウンクリーニングする方法と他社で行う方法は実際どうなのかわかりませんので、わからない状態で当社も色染めして、結果直ぐに色がぬけてしまったというトラブルがないようにダウンの色直しのみはお受けしておりません。
ダウン染め直しに係る料金
全体染め料金 | 22,500円 |
ダウンクリーニング料金(ジャケット) | 8,800円 |
ダウンクリーニング料金(コート) | 11,000円 |
ダウンクリーニング料金(ベスト) | 7,700円 |
ラベル・ワッペン・タグ等外し料金(1箇所につき) | 3,960円 |
(2023年3月31日現在のものです。以後変わる事もございますので、詳しくはHPの料金ページをご覧ください。)
4.表地、または裏地のみを染めることはできる?
ひと括りにダウンの染め変えと言っても、ダウンには様々な形状のものがあり、ご要望によっては手を加えなければ染められないものもあります。
例えば取り外し出来ないタイプの毛皮ファーが付いているダウンは、一度その毛皮ファーを取り外してからでなければ染められません。※皮革は水分・高温に弱いため、高温染め変えをするとほとんどの場合破損してしまいます。
また、表地はそのままに、裏地のみ染めて欲しいというご要望をいただく場合もあります。こういったご要望もお応え出来るのがプロショップひらいしやの染めかえ技術です。※構造によりどうしても不可能な場合もございます。まずはご相談ください。
それでは過去に行った例を見てみましょう。
ダウンの裏地のみ、表地のみの染色も可能!
このようにナイロン素材の裏地が変色してしまったという事例があります。本来の全体漬け込み染色というのは全体を漬け込みますので、表地も一緒に染めてしまうのも一つの方法ですが、どうしても表地は染めたくない場合もあると思います。
そういったご要望に応えるための方法として、裏地(又は表地)のみを外して染め変えするという方法があります。
写真の場合、元々グレーだった裏地が緑色っぽく変色してしまい、裏地を表地から取り外して染め変えを行います。
裏地のみを染め変えれば世界に1着しかないモンジュネーブルの完成
裏地のみを分解し、その部分のみを高温染色して実際出来上がったのが上の写真です。元々裏地はグレーでしたが、お客様のご希望でネイビーに染め変えて出来上がりました。キレイに出来たと思います。このグレーとネイビーは色相的にも相性がよく、最高の出来だと思います。
※表地と裏地を取り外す際の注意点!
①表地と裏地を取り外す際はダウンパック(ダウンを入れておくためのパック)が入っていることが前提です。ダウンパックが入っていなければ、表地と裏地を取り外した時に羽毛が全て出てしまいます。ダウンによってはダウンパックが入っていないものや、ダウンパックが裏地としてそのまま縫い付けられているものもあり、しっかりと確認しなければなりません。
②表地と裏地に貫通する形で取り付けられているスナップボタン等がある場合は注意が必要です。表地と裏地を取り外す際、そういったボタンも一緒に取り外さなくてはなりません。しかし多くの場合スナップボタンや金具は一度取り外してしまうと再利用ができないため、代替品へ交換することになります。※極力似たような代替品へ交換いたしますが、正規品ではないためロゴや刻印が無いものへ交換いたします。
世界に1着しかないダウンを作りませんか?
こうやって、もう着れなくなってしまったダウンや色が気にくわないダウン、色褪せてしまったダウン等に新たな命を吹き込み、世界に1着しかない最高のダウンを作り上げる事が可能なんです。それをお手伝いするのがプロショップひらいしやです。試してみる価値は十分ありますよね?
5.ダウン染め変えの様々な疑問について
ダウン染色をする上で、様々な疑問があると思います。生地が染まるのはわかるけど、ボタンや糸はどうなるの?等、こういった疑問は以下をご覧ください。また、ご自分で染められるのという問いにも最初からお応えします。
①ダウンの染め直しは自分で出来るもの?
これはプロショップひらいしやの職人として言わせていただきますが、ご家庭でやるのは不可能に近いと思います。お金があれば解決できる専用業務用鍋の用意や染料の入手はともかく、とにかく大変なダウン染め直しの行程があります。これがあることにより、不可能に近いと言えるのです。それがなにかというと、ずばり
アイロン掛けです。
これはプロでも大変苦労します。
高温で染め上げて乾燥させたダウンは非常にシワが多い状態にります。それを元の状態に戻すにはプロの技術がどうしても必要になってきます。これは家庭用のアイロンではほぼ不可能だと思ってもらって良いです。クリーニング歴27年のクリーニング師が自信をもって、難しいと言える作業です。下手すると、ダウン一枚を仕上げるのに30分以上かかります。
とにかく、染めた後のダウンの状態は大変な状況です。この情報を知らなければ、まず失敗したと思って捨ててしまう人もいるんじゃないかという位ひどいのです。このくらいひどい状態のダウンをアイロン掛けしていきますので、大変時間と技術を要します。そのため、ご家庭での染め変えはオススメできません。もしどうしてもご自分で染めてみたい方はダウンがダメになって捨てる覚悟が必須です。
②ポリエステル素材も染め変え可能?
ポリエステルは他店様では断られるケースがあるみたいですが、プロショップひらいしやではポリエステル用の特殊染料を用いて染色を行っています。しかしながら、ポリエステル素材は製造過程で非常に高い温度を加えて繊維の間に色を入れて作られています。そうやって作られた素材に再度色を入れるのは難しく、専用の特殊染料で染まったとしても生地の質感が変化したり、色ムラが出てしまうことがあります。そのため、ポリエステル素材100%の生地に関してはあまりお勧めできかねます。※他素材との混合生地であればそこまで影響はございません。
③ボタンや縫い糸など生地以外の部分はどうなるの?
これもよく聞かれることですが、ダウンを染め変えた時には、ダウンの生地以外(ボタンや糸、ファスナー等)は素材によってそれぞれ違う染まり方をします。
プラスチック部分の染まり方
プラスチックでできているボタンやファスナー、調節紐の部品等ならほぼ染まる傾向にあります。これは染めた色のままにボタンの色が変わる傾向にあります。
金属部分の染まり方
金属のファスナーや調節紐金具等は、そこがコーティングされているかどうかによって染まったり染まらなかったりします。(一部だけコーティングが剥がれている場合は、剥がれていない部分と染まり方が異なります。)稀に染めた色のまま染まってしまうケースがありますが、大抵の場合は染まったとしても表面に薄く幕ができるようなイメージです。
縫い糸
縫い糸は染まらない事が多いです。これは縫い糸そのものが生地とは異なる素材で作られていることがほとんどだからです。縫い糸の色も踏まえた上で染色の色を決めなければ、糸だけ浮いて見えるようになっていまうこともあります。そのため、全体染めを行う場合は元の色や縫い糸と同系色の色をオススメします。そうすれば、例え糸が染まらなくても違和感なく見えるからです。とはいえ糸も一概に染まらないとは言い切れませんので、これもやってみないとわからない部分です。※縫い糸の素材まではわからないため、染まるかどうか事前に知ることはできません。
④染色のみは受付できる?
染色のみの受付は不可です。
これはここまででご説明いたしました通り、染色前の汚れ落としクリーニングと染色後の色止めを兼ねたクリーニングを何度も重ねるため、クリーニングと染色はセットでご注文頂きます。料金も染色代とクリーニング代と別々にいただきます。染色は色を染める前にクリーニングして汚れを落としてからでないと色が取れてしまいますので、ご理解をお願いいたします。
⑤染色後の着用中等に他に色が移ったりしない?
PROSHOP HIRAISHIYAでは染色後に3回以上クリーニングを重ねて、着用中や次のクリーニング時に色が出ないように色止め作業をしております。これをしないと、染色後も色が出てきてしまい、着用中に色が出てきてしまいます。しかし、これも完璧ではありません。何度色止めしても、着用状況や保管状態によって色が出てきてしまうことはあります。
⑥染色した後はどのくらい持つ?
製品として売られるときは高温で染色して作られています。それと同じ状態に近い方法で染色しているので、染色した後に直ぐに色が抜けるとういことはありえません。そのため、何年もその状態を維持して着られます。ただし、これも絶対はないので、着用回数や保管状態によって色々な変化が起こりえますことをご了承願います。これは部分染色した物とは比べものにならないくらいの強度で染まっています。
6.ダウン染色の注意点
染める時は、高温の80℃以上で染めるので、生地が縮んだり、シワが出来たりします。そのため、染色後は出来るだけ伸ばして仕上げます。その他、つけ込みの為、メーカータグやアニメラベル等の部分も一緒に染まってしまうといった様々な事が起こりえます。
①ラベルやワッペンが一緒に染まってしまう
高温漬け込みにて行う全体染めは、ワッペンやラベル、タグなども一緒に染まってしまいます。
それを防ぐためには、染めたくない箇所を染色前に取り外す工程が必要です。もちろん、染色後に付はけ直しもいたします。ワッペンやタグの数か所くらいで……と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、一度ほどいて再度縫い直すという大変な作業がありますので、別途料金がかかってきてしまいます。
ラベル・ワッペン外し一カ所につき3,960円
(2023年3月31日現在の価格)
全体染めをご希望のお客様は、ご注文時にどの部分を取り外すかご指示をお願いいたします。特にご指定が無い場合は取り外し不要と判断させていただき、そのままお見積書兼ご請求書を発行いたします。※お支払い前に変更可能
ワッペンやラベル、タグ以外でも染めたくない箇所がございましたら遠慮なくお申し付けください。取り外し可能かどうか確認し、別途お見積りさせていただきます。
②縮みの恐れ
ナイロンは85℃以上の高温で染め、ポリエステルに関しては沸騰した染料で染めるため、生地に大変な負荷がかかります。PROSHOP HIRAISHIYAでは極力ダウンにダメージを与えないように特殊な製法で行っておりますが、その方法も完全ではございません。
製品や状態によっては縮みやシワが出来たりしてしまうことがあります。縮みやすいとされるウールでも縮まない物もあれば、ナイロン系のダウンでも糸が縮んでしまったり、目には見づらい細かな傷が原因となって縮んでしまったりすることもあります。
事前にわかることであればお客様にお伝えいたしますが、何が原因となって縮みが起きるのか、私共にも予想できないことがあり、挙げていけばきりがありません。そのため全てのダウンに起こりえることと考えていただいて結構です。
③色ムラの恐れ
ダウンを全体染め替えするとき、PROSHOP HIRAISHIYAではダウンに色ムラが出来ないよう常に手動で動かしながら染めています。
しかし、その工程を徹底していたとしてもダウンに変色や白化、シミ・汚れなどがあるとその部分が色ムラとして残ってしまうことがあります。もともと変色や白化、シミ・汚れが気になって全体染めを依頼したのに色ムラになってしまうの? と思われるかもしれませんが、全体染めで色が綺麗に入るかどうかは元の色が大きく関係してきます。そのため、色が変わってしまっている箇所や、シミ・汚れが付いている箇所とそうでない箇所では染まり方が異なってしまい、色ムラとして残ってしまうことがあるのです。ただし、変色や汚れがあったからと言って絶対色ムラになってしまうというわけではありません。ムラなく綺麗に染まることもございます。
とはいえ、多くの場合は多少なりとも色ムラとして残ってしまうのが現実です。そのため、全体染めを行う場合は元の色よりも濃い色で染めることをおすすめしております。元の色と近い色や薄い色で染めてしまうと、変色箇所や汚れ箇所の濃淡が強調されてしまうことがあります。その点、濃い色で染めればそのようなリスクが軽減される効果が期待できます。
④取り外しができない毛皮ファーがある場合
ファーは見たまま、毛皮です。皮革素材は水に弱いため、染めることはもちろんウェットクリーニングもできません。そのため取り外しができないタイプのファーが付いている場合は通常全体染めをお勧めしておりません。
しかし、どうしても全体染めをご希望される場合には、ファー部分を取り外してから染めることも行っております。毛皮の取り扱いは大変難しいため、ファーを取り外して染色後に再度取り付ける作業は高額になります。範囲や構造によって金額が異なりますため、実際にダウンを見させていただいてからのお見積りとなります。(最低15,000円~)
※ファーの劣化が進んでいる場合はクリーニングそのものがお勧めできないこともございます。
ファークリーニンングについてはこちら → https://downjacket.pro/blog/2962/
⑤染色出来ない素材
アクリル素材は染まらない
どんな素材でも染色できるかといえば、そうではありません。唯一染色出来ない生地と言えば、アクリル素材です。アクリル素材は当社で過去色々試してきましたが、そのまま色味が残る可能性が高いです。アクリルが混紡している素材に関しては染色出来る可能性がありますが、アクリル100%というのは難しい可能性が高いです。
7.染色はどんな色でもできる?
ダウンの染色を好きな色、もしくは元の色に変えたいと思う方はたくさんいらっしゃいます。しかし、希望通りの色にできることは多くありません。そのため、
ダウンの染色はどんな色でも、というわけにはいきません。
染色は元の色より濃い色でのみ染色が可能です。例えば、薄い茶色であれば、濃茶や黒に。薄いグレーであれば、濃いグレーや黒といった感じになります。今よりも薄い色には出来ません。
ダウンを染めるとき、多くの場合は変色箇所や汚れ箇所等の色の差がある状態なので、その差を無くすためには元にある色を染めつつ、薄くなった箇所も一緒に染めなければなりません。そのため薄い色で染めても当然そのまま色の差が表面に現れてしまいます。よって、基本は元の色より濃い色でのみ染め変えが可能です。また、染色は元の色の上から染め変えるので、元の色が残ってしまうこともあります。特に赤色は強く残ってしまう傾向にあります。
8.全体染めビフォー&アフター
それでは実際にどのように染まるのか、PROSHOP HIRAISHIYAで染めたダウンのビフォーアフターを見て頂きましょう。
①モンクレール(1)
こちらのモンクレールはベージュからネイビーへの染め替え依頼です。(素材はナイロン)※このタイプのダウンはボタンとパイピング部分が別の色に染まることが多い傾向にあります。
②モンクレール(2)
こちらのモンクレールは焦げ茶から黒への染色依頼です。内側の生地が緑色に変色しています。黒という強い色を入れることによって変色箇所と元の色の箇所で差が出ないようにしています。(素材はナイロン)
③モンクレール(3)
こちらは全体的に色あせが見られ、縫い目や袖口等に擦れ穴が出来てしまっているダウンです。染色のみをご希望でしたが、修理をしないと擦れ穴が広がってボロボロになってしまう可能性があるため修理と染め両方をお勧めいたしました。(素材はナイロンとコットンです)
④ピレネックスダウン
こちらは写真でパッと見でわかる通り、全体的に退色してしまっているため、黒に染め変えご希望でした。(素材は綿)
9.染め直しの納期は?
ダウンの染め直しの納期は、とても時間がかかります。通常のダウンクリーニングのみでも時間がかかるのに、ダウンクリーニング+ダウンの色染め+リペアも絡んでくるため、通常のダウンクリーニングの3倍はかかります。そのため、お急ぎの方にはオススメできません。たまにお急ぎで頼まれる方がいますが、中途半端な状態ではお返し出来ないため、早くても最低2ヶ月は頂いております。
ダウンの染め直しの納期
■納期は通常2ヶ月~3ヶ月かかります。
★ワッペン外し→クリーニング→染色→伸ばし加工→クリーニング→ワッペン付け→仕上げ
工程だけでもざっとこれだけありますので、時間はかかります。
ただし、お急ぎ便(2,860円)でご注文いただくと、他のお客様よりも優先して作業を進めるようになりますため、納期を短くすることができます。
■お急ぎ便は1ヶ月半~2二ヶ月
※このページに書かれている期間はすべて当社営業日での換算です。例えば、当社休みの期間である年末年始お休み等はこの期間に含まれておりませんので、その分プラスされた期間が実際の納期になります。お気をつけください。
ご検討の程よろしくお願いいたします。
10.まとめ
染め直し・全体染めは色褪せや変色、シミ・汚れのあるダウンを生まれ変わらせることができます。しかしそれ故に大きなリスクもあることを認識していただきたいです。
ここまでで何度か記載してきましたが、染め直しは高温漬け込みにて行うためダウンや生地にかなりの負荷をかけることになります。負荷をかけることによって起こる症状はいくら経験を重ねても予想できないことが多々あります。
稀にお客様の手元に届いたダウンを見てイメージと違っていたり、ひどい状態だと感じてご連絡をいただくこともございます。その際、「こんなことになるなら最初から言ってほしかった」と仰る方もいらっしゃいます。もちろん、私共もダウンの状態を見て”こういう症状が起こりそう”と予想される場合はお客様にお伝えしていますが、予想すらできない場合はお伝えしようがありません。
全体染めをすることによってどんなダウンにも起こりそうな症状は全て利用規約に記載しておりますため、染める前には必ずご一読をお願いしております。また、ダウンの状態を確認し、記載してある症状のうち特に起こり得そうなもの、記載はしていないが予想されることはお見積りの時点でお客様へご連絡いたしますため、そこで染めるかどうかの最終的なご判断をお願いいたします。
100%のお客様にご満足いただけるよう尽力しておりますが、現実は決して100%のお客様が満足しているとはいえません。できるかぎりお客様と私共との認識の差を埋めるためお見積り時のご説明と利用規約がございます。そこだけは最初にご理解くださいませ。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
染めについての関連記事
全体染めで起こりえる症状について → https://downjacket.pro/blog/2842/
色焼け・変色について → https://downjacket.pro/blog/2493/