羽毛の種類とその特徴について
2023.06.12
これまで、過去の記事でも【ダウンとフェザーの違いについて】、【キャトルフロコンとは】というタイトルでたびたび触れてきた羽毛ですが、本日はなぜダウンに使用されるのはガチョウやアヒルの羽毛なのか、についてのご説明と、PROSHOP HIRAISHIYAのダウンクリーニングのこだわりについてご紹介していきます。また、今回羽毛についての記事という事で、当社でご用意している羽毛に関するオプションについてもご説明させていただきます。
目次
1.ダウンとは
まず、ダウンジャケットに使われる羽毛の種類について簡単にご説明していきます。
1−1 水鳥と陸鳥
そもそも鳥は大きく2つに分類されます。一つ目は川や湖、海岸などの水辺に生息しているカモやガチョウ、白鳥のような「水鳥」。そしてもう一つが、陸地を主な生息環境とするニワトリやハト、カラスなどの「陸鳥」です。
1−2 なぜ水鳥の羽毛が使われるのか?
ダウンジャケットには水鳥の胸元の羽毛が使われているのですが、なぜ、同じ鳥でもニワトリなどの陸鳥ではなく水鳥でないといけないのでしょうか。そこにはそれぞれの住む環境が関係しています。水鳥は冬の厳しい寒さの中でも生きていくための機能が備わっています。水鳥には水面に浮かぶため、そして体温の低下を防ぐために、「ダウン」というタンポポの綿毛のような形状をした毛があります。このタンポポの綿毛のような形状というのが大きな特徴です。これによって立体的な羽毛の中に空気を含むことが出来ます。
それに対して陸鳥の羽は平面的な形状をしており、水鳥と比べ水分を吸収しやすい性質があります。そのため、ふっくらしたボリュームで保温性の必要となるダウンには陸鳥の羽は適さないのです。
1−3 水鳥のダウンなら何でもよい?
先ほど水鳥の一例としてカモやガチョウ、白鳥を挙げましたが、水鳥の羽毛であれば何でもよいかというと、実はそうではありません。一般的にダウンに用いられるのは「グース(ガチョウ)」と「ダック(アヒル)」が主です。どちらもイメージとして思い浮かべるのは白い体に黄色いくちばしではないでしょうか。見た目の違いとしては、ガチョウの方が首が長くアヒルのくちばしは平べったい形状をしています。
ダウンウェアとしての性能にも違いが出ます。一般的に、グースダウンの方がダックダウンと比べてダウン(タンポポの綿毛のような毛のこと)が大きいです。そのため保温性に優れています。また、グースの方がにおいが少ないという特徴もあります。このにおいの原因は様々ですが、それぞれの餌が大きく関係しています。ガチョウは草食であるのに対しアヒルは雑食です。草食のガチョウに比べ体に油脂がつきやすくなるため、その油脂のにおいが羽毛から発せられているというのが一つの原因なのです。
2.世界のダウンの特徴
ここまで、ダウンに水鳥の羽毛が使われる理由とその種類についてご説明をしてきました。ここからは世界各地のダウンの原産国や特徴についてご説明をしていきます。
2−1 ダウンの生産はどこが多い?
ダックダウンはそのほとんどが中国が原産となっています。グースダウンよりも比較的安価で入手しやすい傾向にあります。日本で輸入している羽毛も8割がアジア産(中国等)です。
一方のグースダウンは、ヨーロッパの国々が主な原産国となっています。一般的に寒い地域で飼育された水鳥が高品質であると言われています。その理由としては厳しい寒さへ対応していくため、保温性に優れた羽毛で自分の身を守るためです。実際に高級ブランドとして名前の挙げられるモンクレールやカナダグースなどで使用されるグースダウンはヨーロッパの国々(その中でも特に、ハンガリーやポーランド)で生産されており、世界でも高い評価を得ています。
2−2 ホワイトコウダグースダウン
上記で名前を挙げたポーランドやハンガリーは、国家プロジェクトとしてグースの品種改良を行ってきた背景があります。
なかでも、ホワイトコウダグースが有名です。こちらは1946年、ポーランド北西部のコウダ・ヴィエルカに農業復興の上で重要となる生産性や競争力を向上させることを目的として開設された動物飼育科学研究施設で、デンマークより輸入されてきたホワイトグースを長年の歳月をかけ品種改良や飼育技術の研究を行った末に誕生したもので、ポーランド唯一、グースとして独立した種として認定されており、2001年には商標登録もされています。現在ではホワイトコウダグースは同国内でのグースのほぼ100%を占める普及率を誇ります。
2−3 フランスのグースダウン
フランスは寒暖差が激しく北部は夜間に気温が下がることが多い地域です。そういった厳しい環境の中長期にわたり飼育されているため、大きく保温に優れた性能を有する羽毛が育ちます。
モンクレールでの経験をもとにイタリアにて立ち上げられたデュベティカは、広大な敷地でのびのびと育てられたフランス産のグレーグースを使用しています。100%フランス産にこだわり、ペリゴールを中心とした南仏地方で最高級のフォアグラ用に飼育されているグレーグースから最も上質な部分を厳選して使用しています。
モンクレール・デュベティカの歴史についての記事も是非併せてご覧ください。
モンクレールhttps://downjacket.pro/blog/2487/ デュベティカhttps://downjacket.pro/blog/2571/
3.PROSHOP HIRAISHIYA ダウンクリーニング
プロショップひらいしやのダウンクリーニングは羽毛にとって大切な油を保護する100%ウェットクリーニングを採用し、さらに、個別保護洗いと国家資格者のシミ抜き処理で衣類を大事に、そしてよごれ落ちや風合い共に最高品質で仕上げています。
3−1 ウェットクリーニングのメリット
ウェットクリーニングのメリットはなんといっても、汗汚れに対しての効果の高さです。汗は水溶性の汚れの為、水より軽い石油系の溶剤を使用するドライクリーニングでは洗浄力が弱く、汚れが落ちにくいのです。
ダウンに使われている羽毛には動物性油脂が含まれているのですが、それにより羽毛の間に空気を含むことが出来るのです。しかしドライクリーニングは油溶性の汚れに大きな効果を発揮するクリーニング方法ですので、羽毛に含まれた動物性油脂を洗浄し(取り除い)てしまうのです。そうなると羽毛の間に空気を含むことができなくなり、ダウンのボリュームがなくなってしまいます。
ウェットクリーニングは上記のような点を防ぐ方法として、非常に有効なのです。 ですが、ウェットクリーニングはむずかしく、技術が必要です。さらに経験の豊富さが重要となってきます。なので多くのお店ではドライクリーニングを採用していたり、お店によってはモンクレールやカナダグースなどの高級ダウンは取り扱ってもらえないこともあります。モンクレールダウンなどブランドの高級ダウンを出すときは、過去にもクリーニングを受け付けたことのあるお店、経験の豊富なお店へ依頼することをオススメします。
当社ではウェットクリーニングを採用しており、高級ダウンクリーニングも、通算50,000着以上のクリーニング実績がございます。特にモンクレールはお預かりするダウンの大半を占めております。ぜひ高級ダウンのクリーニング先をお探しの方はPROSHOP HIRAISHIYAもご検討くださいませ。
3−2 乾燥へのこだわり
PROSHOP HIRAISHIYAのダウンクリーニングは洗い方だけでなく、乾燥にもこだわっています。ウェットクリーニングで汚れを落とした後は、しっかり時間をかけて乾燥させていきます。一般的なクリーニング店では、短時間での乾燥を行うため乾燥時の温度は70度~と高めに設定されており、乾燥時間も45分ほどとなっていますが、PROSHOP HIRAISHIYAでのダウンクリーニング時の設定温度は40~55度ほどと低めに設定し、約3倍の時間をかけてゆっくりと乾燥させています。下の画像のとおり高温で短時間で乾燥と行った羽毛は、乾燥後も大きく羽毛の塊が残っているのに対し、PROSHOP HIRAISHIYAでのダウンクリーニングは羽毛の塊がほとんどなくふんわりと広がった状態になっています。(こちらは当社HPにて掲載しております。)
3−3 ボリュームアップに特化したオプション
PROSHOP HIRAISHIYAでは、【ふかふかボリューム2倍アップ加工】という有料オプションをご用意しております。ダウンのボリュームは、性能(保温性)はもちろんのこと、フォルムにも大きく影響するポイントです。もちろんダウンクリーニングだけでもボリュームの復元は期待できますが、こちらのオプションでは、通常のダウンクリーニングで使用している柔軟剤に加えて特殊な溶剤(無臭)を使用し、ボリュームの回復を図っています。しかもこちらはボリュームアップ効果だけでなく、アミノシリコン成分による光沢増し効果、さらには肌触りが良くなる効果もついています。着用していく中で徐々に薄れてきてしまう光沢もこちらのオプションをご利用いただくことでよみがえります。
※2倍アップと表記をしておりますが、必ず2倍になると保証できるものではございません。素材や構造、ダウンの状態によっては効果が出にくいものもございます。
特に大きな損傷はなく、気に入っているけれどボリュームや保温性が気になる、という方にオススメのオプションとなっています。ご興味のある方はぜひこちらの【ふかふかボリューム2倍アップ加工】についての記事も併せてご覧ください。
https://downjacket.pro/blog/3141/
3-4 モンクレールダウンの実例
こちらは、先ほどご紹介した【ふかふかボリューム2倍アップ加工】を実施する前と後のモンクレールダウンです。
クリーニング前(店舗での検品時点)のモンクレールダウンを見てみると、ダウンが下に沈み少しヘタッとしています。これはモンクレールダウンを着用している間に汗や空気中の埃や湿気などを中のダウンが吸収してしまったことにより起きています。こちらのモンクレールダウンに、クリーニング+ふかふかボリューム2倍アップ加工を施すと、右のような状態になります。クリーニング後のモンクレールダウンは全体的にふっくらしていて、フォルムにもハリが出ましたね。下に沈んでしまっていたダウンが含んでいた汚れが落ち、長時間の乾燥とボリュームアップ用の溶剤の効果でダウンの湿気が取り除かれ、ダウンもしっかり空気を含んでいる状態です。
モンクレールダウンはフランス規格協会(AFNOR)が定める最高品質の証であるキャトルフロコンの称号を与えられた羽毛を使用しています。また、モンクレールダウンは各部分によって1グラム単位で細かく使用するダウンの重さが定められております。そのうえダウンを充填する作業は機械を使わず、人の手で丁寧に丁寧に行われています。そんな最高レベルの技術と品質を備えたブランド、モンクレールのダウンですので、ボリュームが減ってしまった状態ではもったいないですよね。最高の状態で着用していただくため、モンクレールダウンが持つポテンシャルを遺憾なく発揮させるため、クリーニングだけでなく、オプション【ふかふかボリューム2倍アップ加工】をご用意しております。
4.まとめ
さて、今回はなぜダウンに使用されるのはガチョウやアヒルの羽毛なのかについてと、当社でのダウンクリーニングのこだわりについてモンクレールダウンを例に挙げて、オススメもオプションも交えながらご説明させていただきました。だんだんダウンのボリュームが減ってきている、小さな穴が開いてしまってダウンの飛び出しが気になる、などのお悩みのある方はぜひ当社でのクリーニング・修理もご検討くださいませ。また、注文方法や現在のダウンについてご不安な部分、クリーニングの内容について確認したいことがある場合は無料カウンセリングや電話注文も承っておりますので、下記リンクよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
【無料カウンセリング】https://downjacket.pro/contact/
(該当箇所の画像等添付いただくとご案内がスムーズです)
【ご注文フォーム】https://downjacket.pro/order/
(ネット注文以外に電話注文も承っております)
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