ファークリーニングについて

2023.02.24

ファー、すなわち毛皮はその優れた断熱性から古くから衣類として使用されてきました。動物愛護上の問題もあり現在は毛皮廃止に向けた動きを見せる傾向が強く、代わりにフェイクファーと呼ばれる人工毛皮を使用することがほとんどになってきています。

プロショップひらいしやでお引き受けしているダウンウェアにもファーが付いているものが多くあります。新しいダウンに使用されているファーはフェイクファーが多いですが、ダウンが製造された年代によってはもちろんリアルファーが使用されているものもあります。

今回はそのファーと、ファークリーニンングについて詳しく見ていきましょう。

1.ファーの毛抜け

ファーの毛抜けが気になる……そんな思いをされたことはございませんか? ファーの毛抜けは着用状況や保管状況によってはどのファーにも起こり得ることです。毛抜けの原因には大きく三つございます。それぞれ見ていってみましょう。

1-1ファーは水に弱い①

ファーは非常に水に弱いです。これはファー(毛皮)だけでなく皮革全般に言えることですが、特にファーは水に濡れると毛抜けが生じてしまいます。この毛抜けが起こる原因は様々ですが、衣類に使用されている毛皮の多くは裏側が毛根付近まで削られており、毛が抜けないよう糊で止められています。水に濡れると糊と毛皮の間に浸透してしまい糊の力が弱まるため、毛抜けに繋がることがあります。

1-2ファーは水に弱い②

二つ目もファーが水に弱いことに関係しています。毛皮の皮部分が水を含むと革が膨張します。乾燥するとその膨張は治まるのですが、一度広がった毛穴は元に戻らないため、毛抜けの原因となることがあります。

1-3虫食い

毛皮を喰う虫は多く、ヒメマルカツオブシムシやヒメカツオブシムシ、イガ、コイガ等が挙げられます。虫の種類によって毛の方を食べるか、皮の方を食べるか異なります。毛の方を食べられてしまうと毛の千切れに繋がり、皮の方を食べられてしまうと革の破損や破れに繋がります。

ほとんどが春に産卵し、夏にかけて毛・皮を食べるようです。プロショップひらいしやに届いたダウンのファーにも不明な繭がくっついていたことがありました。ファーを守るためにもシーズンが終わったらクリーニングに出して清潔な状態、適切な温度・湿度で保管することをお勧めいたします。

劣化により破れてしまっているファー

2.ファーはクリーニングできるの?

結論から言えばファーはクリーニング可能です。ただし、これはドライクリーニングに限ります。ウェットクリーニング(水洗い)をすると毛皮が傷んでしまい、破損の危険があるからです。

2−1水洗いをしてしまったら?

万が一で水洗いをしてしまった場合、お直しするのは難しいです。水洗いをしてしまうと質感が変わってしまいます。また、前述いたしました通り毛抜けの症状が出たり、皮部分が硬化したりして破れやすくなってしまいます。

ただ水に濡れてしまった程度であれば応急処置としては乾燥機にはかけずにタオル等でしっかりと水分を取り、自然乾燥をしてみてください。

2−2ドライクリーニングなら絶対に大丈夫なの?

元々破損が無いファーであれば通常はドライクリーニングを行うのに何ら問題はございません。しかしながら、クリーニング前の段階で毛抜けが多い場合はクリーニング自体お勧めできかねます。毛抜けが多いということは、皮そのものが劣化している可能性が高いです。原因は水や虫だけでなく自然劣化も考えられます。ドライクリーニングはウェットクリーニングよりも衣類へかかる負荷が少ないですが、それでも皮が劣化していると破損や破れといった症状が出てしまうことがあります。

2−3プロショップひらいしやのファークリーニングって?

プロショップひらいしやのファークリーニングは、まずファーの状態を確認することから始まります。前項で説明いたしました通り、毛抜けがあるとドライクリーニングでも破損してしまう恐れがあるためです。毛を軽く引っ張り、抜けないか、千切れないかを見ます。ここでもし毛抜けや千切れが見られた場合はお見積りの際お客様へファーのクリーニングはお勧めできないとお伝えしております。

その後、ファー側に付いている生地の前処理を行い、ドライクリーニングをいたします。ファーは首周りに当たることが多く、汗や皮脂汚れが付いていることがありますため、汗が良く落ちる液剤も使用します。ドライクリーニングの後は自然乾燥です。決して乾燥機には入れません。最後に軽く蒸気をあてて一点ずつブラッシングし、完成です。

自然乾燥中のファー。ブラッシング前のため毛並みが整っていません。

まとめ

衣類に使用されるファー・毛皮は水に弱く、虫にも喰われてしまうような非常に繊細なものが多いです。適切な環境で保管をし、適切な使い方をして、適切なお手入れをしなければなりません。プロショップひらいしやではファーを綺麗な状態にしてお返ししており、大切にお使いいただくためのお手伝いができるかと存じます。もしファーが破れてしまった場合は、状態や構造によっては修理が可能な場合もございます。ぜひ一度ご相談だけでもお問合せください!