全体染め変えについて

2023.08.18

季節の変わり目に箪笥やクローゼットから取り出した衣類が変色して着れなくなってしまった経験はございますか? そういった衣類は全体を染め変えることでまた着られるようになる可能性がございます。
これはダウンウェアでも同様で、PROSHOP HIRAISHIYAではダウンウェアの染め変えも行っております。今回はモンクレールダウンを例に取り上げ、PROSHOP HIRAISHIYAの全体染め変えについてご紹介していきます。

1.全体染め変え

PROSHOP HIRAISHIYAの全体染め変えでは、衣類を高温で染め変えています。
特殊な染料を使用して高温を与えることで生地の繊維に染料が入り、色が染め変えられるという仕組みなのです。

全体染め変えを行う場合、実際に染め変える前にダウンの状態を十分に確認しなければなりません。傷や穴、破れはないか? どこが変色しているのか? 染めると破損しそうな箇所はないか? そもそも染められる素材なのか? 等々……確認する項目は非常に多いです。
染め変えは衣類やダウンの色について生まれ変わらせることが目的ですが、その分生地に負荷をかけてしまいます。そのため事前に状態を確認することで予想できる主な症状についてお客様へお伝えし、そのうえで本当に染め変えを希望されるのかどうかご意向を伺っております。

それでは実際にダウンを染め変える際の基準やその色、染め変え可能な素材等についてみていきましょう。

染色中の様子


1-1 染め変えの基準

一言にダウンを染め変えると言っても、実際にどのような状態のものに全体染め変えがお勧めなのでしょうか? 
ダウンウェアの色が変わってしまう症状としては「変色」「色褪せ」「色抜け」「傷」「白化」などが挙げられます。これらは色が変わるという意味では同じですが、それぞれ原因や、生地へかかった負荷の度合が異なります。この負荷の度合いによっては全体染めを行っても色が染まらなかったり、染まっても薄いまま、またはそこだけ濃く染まってしまう可能性があります。

PROSHOP HIRAISHIYAで全体染め変えをお勧めする症状は「変色」「色褪せ」「白化」の3つです。

この3つ以外の症状については生地が傷ついて繊維が壊れてしまっている可能性が高く、全体染めを行っても全く染まらない可能性があります。


1-2 染め変えの色

黒色以外の全体染め変えについては、元の色とは別の色で染める必要があります。理由は変色している部分とそうでない部分で色の入り方が異なるからです。
変色していない部分については素直に色が入ることが多いのですが、変色してしまっている部分については生地の表面が傷ついたり劣化していることもあり、変色していない部分よりも染まり方が薄い傾向にあります。
つまり、変色をどうにかしたくて全体染めを行うのに変色部分が強調されるような染まり方(色ムラ)になってしまう可能性が非常に高くなるのです。
そのため、全体染め変えを行う場合は元の色よりも濃い色で染め変える必要があるのです。

とはいえ、元の色より濃ければ何でもよいというわけではございません。
染め変える際は色を上から塗るのではなく染めていますので、染め変え後の色は元の色が大きく関係してきます。そのため染め変えの色は元の色と同系色の色を強くお勧めしております。
例えば元の色がネイビーであれば濃いネイビーかブラック、ブラウンであれば濃いブラウン(濃い焦げ茶色)かブラック等がお勧めです。
基本的にはブラックがお勧めです。ブラックであれば変色部分とそれ以外での染まり方の違いで引き起る色ムラが目立たなくなる傾向にあります。※色ムラはどんな色で染める場合でも起こる可能性があります。ブラックで染めれば色ムラにはならないということではなく、あくまで目立たなくなる傾向にある、という認識をお願いいたします。


1-3 染め変えと素材

全体染めをする場合、生地の素材も大きくかかわってきます。

ダウンウェアの生地はナイロン、ポリエステル、ウール、綿、革など様々な素材が使用されています。この素材によって染まり方が全く異なっており、使用する染料も変えなければなりません。
染まりやすさで言えば綿、ウール、ナイロン、ポリエステルの順です。
特にポリエステル素材100%は非常に染まりにくく、染まったとしても色ムラが発生する可能性が高いです。というのも、ポリエステル素材はその製作途中で135度前後の熱を加えて染色されます。ポリエステルは非常に結晶性が高く、そのくらいの熱を加えて繊維に隙間を作らなければ色が入っていかないのです。この高温は技術的・機材的にも簡単に出せるものではなく、PROSHOP HIRAISHIYAも例外ではありません。そのため、どうしてもポリエステル素材100%のダウンを染めたい場合はこの点についてあらかじめご了承くださいませ。

カナダグースダウンの素材表示。ポリウレタン素材が使用されているが、100%ではないため全体染めが可能。

ワンポイント!
ポリエステルが使用されているのは生地だけではありません。実は縫い糸もポリエステルで作られていることがほとんどで、全体染めを行っても縫い糸だけが染まらず元の色のままになることが多いです。

上記に記載いたしましたような生地の他、ダウンウェアには革や毛皮が使用されていることもあります。
革であれば上から顔料を塗ることで色の補修が可能な場合がありますが、毛皮だけはそうはいきません。

毛皮、つまりファーは非常に水に弱く、濡れると毛抜けが生じてしまいます。この毛抜けが起こる原因は様々ですが、衣類に使用されている毛皮の多くは毛が抜けないよう糊で止められており、水に濡れると糊と毛皮の間に浸透して糊の力が弱まってしまい毛抜けに繋がることがあります。また、水にぬれることで毛穴が広がり毛が抜けてしまうこともあります。
そのため毛皮が使用されているものについては全体染めを行うことができないのです。
ただし、毛皮(ファー)部分が取り外しできるものについてはお引き受けが可能です!

※部分的に革が使用されているものについて
ファスナーの引手や装飾部など部分的に革が使用されているものについてもご希望の場合は全体染めを承ることは可能です。ただし、その場合革部分がカッチカチに硬くなってしまうため、それを避けたい場合は取り外すことをお勧めいたします。


2.モンクレールダウンの染め変え

首元(特に内側)が緑色に変色しているモンクレールダウン

言わずと知れた高級ダウンブランドのモンクレール。このモンクレールダウンについて、PROSHOP HIRAISHIYAに寄せられる変色のお悩みは多いです。
首回りが緑色っぽくなっていたり、日焼けで色が薄くなっていたり、中には元の色がわからないほどに変色してしまっているものもあります。変色が気になって着なくなりどうしようか迷っているうちに時間が経って更に変色が酷くなってしまった……なんて経験はございませんか?

変色が酷くなればなるほど染め直しでも色が入りづらくなります。気になってきたら一度ご相談いただくことをお勧めいたします。

さて、それではモンクレールダウンの染め変えについて見ていきましょう。


2-1 アニメラベルは染まってしまう?

モンクレールダウンの特徴としてアニメラベルがあげられます。ダウンの内側に縫い付けられているラベルですね。

全体染めをする際には文字通りダウンウェア全体を染めますため、もちろんアニメラベルも染まってしまいます。それなら染めたくない、と思うかもしれませんが、ご安心ください。

染めたくない場合は染める前に取り外すことが可能です!

これはアニメラベルに限った話ではないですが、ほとんどのラベルやワッペンは染め変えを行う前に取り外すことが可能です。もちろん染め終えてから再度縫い付けるところまで行います。※1か所につき料金が発生いたします。

染めたくないアニメラベルや内側のブランドロゴラベル、表地にあるモンクレールのワッペンなど、ほとんどのものに対応しております。素材や色によってはボタンやファスナーも薄く染まってしまうことがあります。構造によってはこちらについても取り外すことが可能ですので、気になる方はご相談ください!


2-2 染め変えにはクリーニングが必須!

全体染め変えを行う場合にはクリーニングが必須です。これはモンクレールダウンも例外ではございません。

たまに「クリーニングをしないで染めだけをすることはできないのですか?」と聞かれることがありますが、モンクレールダウンの全体染め変えの際にはまず汚れを落とさなければなりません。クリーニングをせずに汚れが付いた状態で染めてしまうと、その汚れの部分がそのまま色ムラになってしまう可能性が非常に高いのです。また、特殊な染料を使用いたしますため、染めた後も再度クリーニングをしなければなりません。ダウンに付いた余分な染料をクリーニングによって落とし、綺麗な状態でお返しいたします。


2-3 実例

それでは、実際に全体染め変えを行ったモンクレールダウンを見てみましょう。

こちらはかなり色あせているように見えるモンクレールダウンです。
実は縫い目や袖口の擦り切れも酷く、全体染め変えをする前に修理をしています。前述いたしましたように、全体染め変えは生地にかなりの負荷がかかります。そのため破れや穴などがある場合、染め変えをする前に必ず修理することをお勧めいたします。もし穴などが開いた状態で染め変えを行ってしまうと、穴が広がったり、中の羽毛が出てきてしまったりと大変なことになりかねません。
そういうことも含め、全体染め変えには事前の状態確認が非常に重要なのです。

そしてこちらが修理、染め変え後の様子です。

綺麗な濃紺に染まっていますね。
肩口の素材が微妙に異なっていたり、広い範囲の生地が混合素材だったり、綺麗に染まるかどうか私たちにもわからない状態でした。結果、驚くくらい綺麗に染まってくれました。

モンクレールダウンは高級ダウンだから大丈夫でしょうと思っていらっしゃる方もいると思いますが、高級ダウンであるということは、破れにくかったり、シミが落ちやすく汚れにくかったりすることの証明にはなりません。もちろん高級ダウンですから高品質なことは間違いありませんが、使い方や状況によっては脆くもなります。
ましてやモンクレールダウンに限らず染め変えることを前提として作られているわけではございませんので、染め変えることで何が起きるかはその時になってみないとわからないのです。

しかし、ご紹介いたしました画像のように生まれ変わらせることができるのも事実です!

変色してもう着られないと思ったモンクレールダウンでも、処分をする前に一度PROSHOP HIRAISHIYAにご相談ください。


3.染め変えの注文方法

それではダウンウェアの染め変えの注文方法を見ていきましょう。

3-1 ご注文の前に!

ここまでご紹介してきましたように、ダウンウェアの染め変えには様々なリスクが伴います。
自分のダウンウェアはどんな色に染め変えるのがおすすめなのか? そもそも染め変えは可能なのか? 少しでも気になった方はご注文の前に「無料カウンセリング」にてPROSHOP HIRAISHIYAにお問い合わせいただくことをお勧めいたします。

「無料カウンセリング」ではお客様からお送りいただいたダウンのお写真を元に担当スタッフが状態を判断し、染め変えは可能そうか、染め変え時に起こり得る症状としてはどんなものが予想されるのかをお答えいたします。
まずはご相談くださいませ!

※「無料カウンセリング」での回答はあくまでお写真での判断でございますため、ご注文後実際にダウンを確認した際の判断と異なる場合がございます。その点につきましてはあらかじめご了承くださいませ。


3-2 ホームページ、またはお電話から

ご注文はお電話、またはホームページ内の注文フォームから承っております。

お電話の場合はこちら→ 0243-24-9292

注文フォームからは「追加オプション③」にて「全体染め」が含まれている項目をご選択くださいませ。全体染め(クリーニング含む)のみをご希望の場合は「全体染め」、合わせて修理や染み抜きをご希望の場合はそれに合ったものをご選択くださいますようお願いいたします。

こちらをご選択いただきますと、さらに細かい情報の入力画面が出てきます。
ご希望の色や染めたくない付属品(ワッペンなど)の位置をお選びいただけます。

ご不明な場合はお気軽にお電話くださいませ!


4.まとめ

全体染めはある程度の経験を積めばどのような症状が起こりえるのか、その傾向を予測することは可能になります。しかし、日々科学技術が発達しどんどん新しい素材が出てきています。私たちでも見たことのない生地や素材の組み合わせがあり、そのひとつひとつに対応していくことはとても難しいものです。

しかし、それでもお客様のご要望にはできるだけ添えるよう、1点1点複数のスタッフで状態を確認し、予測できるリスクについては事前にお伝えするよう努めております。※すべてのダウンウェアに起こり得るリスクについては利用規約に記載されておりますため、事前にお客様へお伝えしているのはその中でも特に注意しなければならない点や、特殊な状態にあるものに留めております。

私たちがお預かりしているのは”お客様のダウン”です。ダウンの染め変えを行うか否か、最終的に判断されるのはお客様にお願いしております。事前にお伝えするリスクなどについてはその判断材料として受け止めていただければ幸いです。

染め変えにおけるリスクについて、ご納得がいかない場合はご説明させていただいておりますため、疑問点・ご不明点などございましたらご注文前でも後でもお気軽にお問合せくださいませ。



≪関連リンク≫

【全体染めで起こりえる症状について】https://downjacket.pro/blog/2842/

【ファークリーニングについて】
https://downjacket.pro/blog/2962/


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