持続可能な社会とダウンの未来について

2023.08.07

現在、持続可能(サスティナブル)な社会について様々なところで話題になっていますね。当社のブログでも先日、【ダウンクリーニングとSDGs(環境問題)について】という記事を公開し、「買った(すでに手元にある)」ダウンを長くきれいに使う事について当社でできるクリーニングや修理のことを交えながらご説明させていただきました。今回は、「これから買う」ダウンを中心に我々が消費者として出来ること、そしてこれからのダウンの未来についてお話ししていきます。

1.持続可能なダウン生産とは

1−1 レスポンシブル・ダウンフェザー・スタンダード(RDS)

皆さんはレスポンシブル・ダウンフェザー・スタンダード(Responsible Down Standard:RDS)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これはダウンの品質を認証するもので、国際ダウン&フェザー理事会(IDFA)によって定められています。この認証を受けるには厳しい基準をクリアする必要があります。具体的な内容は以下の通りです。

  • ダウンの品質:ダウンの量や品質、ダウンボールのサイズや数、ダウンの色、ダウンの汚れなど
  • ダウンの採取方法:ダウンの採取方法は、水鳥に痛みや苦しみを与えてはならない。
  • 水鳥の飼育方法:広いケージに飼育されており自由に羽を広げることができる。また、水鳥は、健康で、ストレスが少ない状態に保たれている。
  • 環境への配慮:ダウンの採取や製造は、環境に配慮した方法で行われている。

1−2 「DIST」と「RDS」の違い

ここで当社ホームページの他の記事も読んでくださっている方の中には「あれ?」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。といいますのも、過去の記事【高品質なダウンの証キャトルフロコンとは】(https://downjacket.pro/blog/2927/)にてすでにダウンの品質を認証するものについてご説明させていただいているのです。それが「DIST」(DOWN INTEGRITY SYSTEM TRACEABILITYの略/※造語)です。これは『その製品がいつどこで、誰によって作られたのか』を明らかにするために、原材料の生産や調達さらに消費(廃棄)までを追えるようにする仕組みのことを言います。なぜ、ダウンの品質の高さを認証する基準が2つも存在するのでしょうか?

この「DIST」と「RDS」の違いは、認証取得が可能となる基準にあります。実は「DIST」には、水鳥の飼育方法等に関する明確な基準がありません。「RDS」はそういった飼育方法についてまで細かく基準が設けられているのです。その為「DIST」よりも認証のハードルが高いと言われています。

2.われわれ消費者が出来ること

ここまで、持続可能なダウン生産を実現させるための、国際規模という大きな枠組みでの取り組みについてご説明してきました。続いては私たち一人一人が出来る取り組みについてご紹介していきます。これからダウンの購入しようと考えている方も、すでにダウンをお持ちの方も取り組める内容となっていますので、引き続きぜひご覧ください。

2−1 認証されているダウンを購入する

前述した環境問題への影響を受けわれわれ消費者が出来ることの一つとして、「DIST」や「RDS」に認証されているダウンを購入する事が挙げられるのではないでしょうか。先述した通り、厳しい基準をクリアして生産されていますので、最大限環境に配慮したダウンだと言えます。ダウンの質も最高レベルの物を使用しているので、保温性はもちろん着心地も非常に優れています。

こういった認証済みのダウンを使った商品を販売しているブランドはたくさんあります。THE NORTHFACEやパタゴニアなどの人気ブランドでも、RDS認証済みのダウンを使用したモデルが販売されています。また、言わずと知れた超人気ブランドモンクレールではDIST認証済みのダウンが使用されており、モンクレールダウンの内側には、モンクレールのロゴのシールがついたタグなどと合わせて下の画像のように「DIST」と書かれたタグがつけられています。このように様々なブランドで「持続可能な社会」を実現するための取り組みが行われています。今後、さらにたくさんのブランドで、こういった環境に配慮された素材を使ったダウンが増えてくることが予想されます。今季新しいダウンの購入を考えているという読者の方はぜひ、モンクレールやパタゴニアのような、国際認証基準を満たしたダウンもご検討してみてはいかがでしょうか。

モンクレールダウンについているDISTのタグ

2−2 長く着られるデザインのダウンを購入する

ファッション業界は他の業界と比べても著しくトレンドが入れ替わるため、様々なデザインが次から次へと登場します。ファッション雑誌でも「今年のトレンドカラーは〇〇」と、デザインだけでなくお色味についても毎年トレンドが取り上げられます。モンクレールなどの人気ブランドではコラボデザインが登場したりすることもありますが、【数量限定】【期間限定】というような魅力的な響きのキャッチコピーで、「買わなくては…!」と急かされるような気持ちになることもあるのではないでしょうか。

というのも実は、日本人は「季節限定・期間限定」というような言葉に弱いとされています。集団で過ごすことの多い日本人は、その中で人が持っていないものを欲しいと思ったり、目立ちたいなと思う傾向・心理があるとされています。また、日本には四季がありそれぞれの季節に合わせて変化を楽しむという習慣があります。そんな日本人にとって季節ごとの特徴を生かしたものはとても魅力的に映るのです。

ですが、そういった新しいもの限定の物を次々購入するというのは「持続可能な社会」をめざす、という観点でみると重要な課題でもあります。先ほども述べた通り、ファッションはトレンドの移り変わりが激しい業界です。次々新しいものが生み出され購入され、トレンドが過ぎたものは着用されなくなり、捨てられていくものも多いです。このようにライフサイクルの短い衣類は環境負荷がとても大きいのです。服を生産するにも廃棄するにも大量の水や燃料を使います。それらは水質汚濁や焼却処分による二酸化炭素の増加などおおきな影響をもたらします。限定のお色味やデザインを楽しむのも、ファッションの魅力の一つですが、そういった目を引くデザインに併せてコーディネートしやすい着回しのきくもの、年齢やトレンドに左右されない長く着られるデザインのダウンを一つ持っておくこともわれわれ消費者が出来る一つの取り組みではないでしょうか。

2−3 ダウンの性能を維持し続ける

ここまで、購入時に私たちが出来ることについてご紹介させていただきましたが、最後は購入後に私たちができることについて紹介させていただきます。

人間は、食事・運動・睡眠を怠ると、仕事のパフォーマンスが落ちたり、病気になったりしてしまいますよね。これはダウンも同じことで、クリーニング・修理を怠ってしまうと当然性能は落ちてしまい、衣類自体の寿命も縮んでしまいます。こういった性能の低下は、モンクレールなどの認証を受けたダウンでも起きてしまいます。ネットではよく一般的なダウンの寿命は3年ほどといわれていますが、きちんとクリーニングやお手入れをして丁寧に使っていれば5年10年あるいはそれ以上着続けることが出来ます。こちらの記事を読んでくださっている読者の皆様のなかにはモンクレールやカナダグースなどの高級ダウンを一生モノとして購入した方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。出来ることならクリーニングなどを行いながら、永くきれいに着続けたいですよね。

着用後は濡れてしまったら風通しの良い場所で乾燥させたり、ハンガーにかけて圧迫しすぎないようにゆとりをもって収納したり、着用時期の前後にはクリーニングに出したりというようなこまめなお手入れがダウンの寿命に大きく影響してきます。当社のブログにてダウンのクリーニングやお手入れについてまとめた記事もございますので、ぜひそちらも併せてご覧ください。

【ダウンのボリュームの効果と維持について】https://downjacket.pro/blog/2897/

3.ダウンの未来について

3−1 エコダウンの誕生

本来、ダウンというのは上の画像のような水鳥の胸に生えているたんぽぽの綿毛のような毛のことを指しています。ダウンは1羽の水鳥から約5~10グラムほどしか採取できないと言われています。現在動物愛護という観点から、動物の毛や皮を使うのを減らそう・やめようというような取り組みがなされています。その中の一つが「エコダウン」。このエコダウンというのは化学繊維が材料で、リサイクルポリエステルなどが使われています。このリサイクルポリエステルはペットボトルをリサイクルしたものから作られています。

Yシャツが作られたりシャンプーボトルが作られたり、すでにペットボトルをリサイクルして何かに生まれかわるという事はあまり珍しくなくなってきていますよね。こうやってリサイクルが出来るのは、日本のペットボトル回収率がとても高いという事も理由の一つなのです。実は日本は国内でのペットボトルの回収率は2022年時点で94%に達しています。これは米国や欧州などと比べてもとても高い回収率といわれています。スーパーやコンビニなどで回収機を見かけることも多くなりました。

エコダウンは、きちんと保温力は保たれており湿気や水にも強いという性質を持っています。もちろんクリーニングもできますし、ご自宅で洗濯することも可能です。原材料がペットボトルであることからイメージがつくかと思いますが、軽さにも優れています。冬は厚手の衣類を着用する機会が増え、その上に厚手のコートなどを着用するとどうしても重たくなってしまいます。エコダウンであれば暖かさはそのままに、軽量化をはかる事も出来ます。ダウンのみならず、様々なものが徐々にこういった化学繊維を使用したものに置き換えらえていく未来が近づいてきています。

3−2 アニマルフリーの製品の台頭

アニマルフリーというのは、そのままの意味で動物由来の素材を使わないという事です。現在、ダウン(羽毛)だけでなくウサギやキツネの毛皮(ファーに使われる)、ヘビやワニの皮(財布やバッグに使われる)などの使用についても世界で問題視されています。なかには高級感のある素材という事で人気が高まり、乱獲などが問題となった生き物もいます。こういった動物たちを守るため、様々な取り組みがなされています。

モンクレールではファーフリー宣言を行い、段階的にファーの使用を廃止していくというような取り組みを行い、代わってモンクレール新コレクションとして再生ナイロンやオーガニックコットンを使用したモデルの発売なども行っています。モンクレールでは「かつて私たちは山に登っていた。しかし今、私たちは山を助けなければならない。」とし、モンクレールは気候変動に対するアクションなど5大原則を掲げるなど、持続可能な社会の実現に向けた取り組みに関するマニュフェストをモンクレールホームページ内に打ち出しています。モンクレール以外に、カナダグースでもコヨーテの毛皮の使用を中止すると発表しています。そのほかヨーロッパではとくに、本物の毛皮をファッションに使用することへの反対の動きが強まっていてイギリス、オーストリア、ドイツ、ノルウェー、ベルギーなどでは毛皮製品の製造が禁止されています。ちなみに日本では、2016年の毛皮用ミンク養殖農場が閉鎖されて以降、毛皮用動物の養殖はされていません。イタリアではSAVE THE DUCKというアニマルフリーブランドが登場し、モンクレールなどのハイブランドに劣らない性能で多くの支持を集め、なんとイタリアではモンクレールやカナダグースなどの有名ブランドを上回る販売数を記録しています。モンクレールやカナダグースをはじめ、様々なブランドが続々とアニマルフリー、ファーフリーのダウンを販売し始めています。今後ますます浸透していき、市場に大きな影響を及ぼす存在となるかもしれませんね。

アニマルフリーの傾向が強まりはじめている

4.まとめ

さて、今回は、我々消費者が持続可能な社会の実現のためにできることについて、そしてダウンの未来についてご説明させていただきました。たくさんの思い出の詰まった大事なダウン。クリーニングに出すことに対して、「ちゃんと汚れは落ちるのか」、「ぺしゃんこになってしまったりしないだろうか」、というような不安をお持ちの方も多いと思います。実際、過去にクリーニングに出したけれどボリュームがなくなって帰ってきたことがあるため、怖くてクリーニングに出せないというようなお声をきくこともあります。PROSHOP HIRAISHIYAはクリーニング実績通算50,000着以上。モンクレールを中心に様々な高級ブランドのダウンクリーニングの経験がございます。確かな技術でふっくらツヤのあるダウンをお届けします。

注文方法や現在のダウンについてご不安な部分、クリーニングの内容について確認したいことがある場合は無料カウンセリングや電話注文も承っておりますので、下記リンクよりお気軽にお問い合わせくださいませ。SNSやホームページにてクリーニング中の様子やクリーニングと併せてオススメしているオプションの紹介なども行っておりますので、ぜひ参考にご覧ください。

【無料カウンセリング】https://downjacket.pro/contact/

(該当箇所の画像等添付いただくとご案内がスムーズです)

【ご注文フォーム】https://downjacket.pro/order/

【電話注文】0243-24-9292 受付時間:午前10:00-12:00/午後13:00-17:00[休日]土・日

(ネット注文は24時間いつでも注文可能)

【インスタグラム】https://www.instagram.com/proshophiraishiya/

(過去の修理事例や工場でのクリーニング作業の様子を毎日投稿しています)

【YouTube】https://www.youtube.com/channel/UCUWwpmQ7rzJOLZGlasUCaxQ/featured

モンクレールとカナダグースのダウンクリーニング(洗濯~仕上げ)中の様子を社長のわたなべの解説付きで公開中。その他にもクリーニングについての情報やモンクレールの特徴など、クリーニングに関する役立つテーマが盛りだくさんです。