シームレスについて

2023.04.13

当社でもお預かりさせていただくことの多いシームレスダウン。特にお預かりの多いブランドは水沢ダウンですね。他にもカナダグースやモンクレールでもシームレスダウンが発売されていますし、高級ダウン以外に身近なところで、ユニクロでも販売されています。本日はこの【シームレス】についてのご説明をさせていただきます。

1.シームレスとは

シームレスというのは、一般的なダウンが縫製によってダウンの入った生地を仕切っているのに対し、樹脂を使って生地を圧着することを言います。この圧着に使われている樹脂は【ポリウレタン】が使用されています。

このポリウレタンというのは、伸縮性のあるプラスチック素材でウレタンゴムともいわれ、天然ゴムの代替品として開発されました。プラスチックと聞くと台所用品や家電などに使われる固いものをイメージしてしまいがちですが、分子の配合によって様々な硬さや特徴を出すことが出来ます。余談ですが似た響きのポリエステルは石油を原料とした合成繊維で、ポリウレタンとは違い伸縮性はありません。さて、少し話がそれてしまいましたが、このポリウレタンという素材はとても軽く、さらに引っ張る力や衝撃にも強い耐久性を持つ素材です。

2.シームレスのメリットとデメリット

さて、続いてはシームレスのメリットデメリットについてご説明していきます。

2-1.シームレスのメリット

メリットとしてまず挙げられるのは、縫製による小さな穴ができないため、針を通した後にできる小さな隙間からダウンが飛び出すことがない、という事です。縫製による穴は、はじめは目立たなくても着用とクリーニングを繰り返していくうちに少しずつ穴が広がっていき、そこからダウンやフェザーが出てきてしまいます。そうするとダウンの保温性、さらに穴が開いた部分から水などを通してしまう可能性もあるため、防水性にも大きく影響します。シームレスダウンはダウンパックを仕切る際に縫製を行う必要がないため、保温性や防水性能の低下を抑えてくれます。

2-2.シームレスのデメリット

デメリットとして挙げられるのが、経年劣化による剥がれが起きる、という事です。こちらはご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。シームレスの寿命は約3年といわれています。ここで注意いただきたいのはいつから数えて3年なのか、というところです。これは、【ダウンが製造されてから3年】です。着用を始めてから、ではなく製造された段階から劣化は始まっています。商品としてお店に並んでいるその間にも、劣化は進んでいるのです。ダウンが製造されてから時間がたっての購入(中古での購入など)の場合だと、数回着用しただけで剥離が起きてしまう可能性もあります。この劣化、剥離はどのダウンにも起こりうることで、実際に起こるタイミングは、着用状況などによって様々です。製造された年から3年を待たずに早く劣化や剥離が起こる可能性もあります。

2-3.モンクレールの場合

モンクレールのシームレスのクリーニングの場合も他の高級ダウンと同様にメリットとデメリットはあります。モンクレールだから他の高級ダウンと違わないのでメリットでいえば隙間から毛が出にくかったり、保温性が高いということも同じですし、デメリットのシームレス部分の剥離も起こります。そのため、モンクレールを維持していくうえでは、定期的なクリーニングはもちろん、加水分解が起きないように保管することが大事になってきます。

モンクレールの製品もモンクレールをクリーニングしているとわかりますが、意外とシームレス製品は多いです。モンクレールは基本的にシームレスは他のメーカーさんと比べてもシームレスが少ない方だとは思いますが、それでもモンクレールの製品数はとても多いので、シームレスの種類も少ないとはいえ、毎年ある一定数のシームレス製品は販売されております。ただしかし、モンクレールをクリーニングする立場から言えば、おそらくこういったシームレス製品は寿命があるということで、今後は少なくなっていくとは思われます。モンクレールを扱う方の中には二年おきに買い替えるという方もいらっしゃいますので、そういった方にはシームレス製品は相性がいいのかなと思っております。

また、モンクレールをクリーニングすることにより、この劣化は進行を早めるのかというご質問を受けたりしますが、ずばりそんなことはありません。逆にモンクレールクリーニングを行わないとシームレスされている部分が余計にかたくなり、劣化を早めるということあります。そのため、定期的なモンクレールクリーニングである程度の負荷を与えてあげることは必要不可欠です。イメージでいうと、車のタイヤがそうです。ずっと使っているうちは柔らかさが維持されておりますが、使わないで放置しておくとかたくなるというように、モンクレールのシームレスも同様に、定期的な負荷を与えてあげると接着部分がしっかり機能を維持し続けられるということです。

また、モンクレールをクリーニングしたことによりシームレスが剥がれてしまったということをたまに耳にしますが、これも違います。これはモンクレールをクリーニングする前に既に、劣化が始まっており、たまたまクリーニングしたことによりそれが表面化したにすぎません。こういったモンクレールの事案はたまにありますが、トラブルになりやすいです。お客様はモンクレールをクリーニングする前はなっていなかったという認識ですが、実際には目には見えてなかったが内部で剥離は始まっていたというところです。これはクリーニングのプロでもクリーニングするまえに剥離が始まっていたという判別は付きません。こうなると、クリーニング屋さんの責任になりがちになってしまいます。そのため、当社のサイト上でよく説明させていただいて未然にこういったトラブルを防ぐようにするしかございません。これはあくまで寿命なので申し訳ございません。

従いまして、モンクレール製品のような高いダウンでも、他のメーカーさんと同様にシームレス素材は一緒のものなので、変化が変わるということはありません。


3.なぜ劣化が起きるのか

デメリットとして取り上げた劣化ですが、一体どのようにして起こるのか、また劣化が起こるとどうなるのかについてご説明していきます。

3-1.劣化はどのようにして起こるのか

劣化は、空気中に含まれる水分や熱そして紫外線など、着用するうえで避けることのできない様々な要因によって、素材に含まれている成分が分解されることにで起こります。こちらについては、洗濯表示タグにも劣化の可能性がある旨の記載がされていることがほとんどです。

3-2.劣化が起こるとどうなるのか

劣化が始まると、徐々に仕切っていた部分がはがれ始めます。製品によってべたつきが出たりすることもあります。仕切りがはがれるとダウンがどんどんと下に落ちていき、最終的には下だけにダウンがたまった不格好なシルエットとなってしまいます。

クリーニングについてですが、すでにこのような劣化や剥離が見受けられる場合、お預かりできない場合があります。また、クリーニング後に劣化や剥離が起こる場合がありますが、そちらに関しましては寿命によるものですので、当社での責任は負いかねますことをご了承ください。

当社のYouTubeチャンネルにて、シームレスダウンについての解説も公開中ですので、ぜひご覧ください。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、【シームレス】についてご説明させていただきました。

とても性能の優れたシームレスダウンですが、素材の性質上どうしても避けられないこともございます。特徴を理解し、お手入れしながら大切に着用したいですね。当社のインスタグラムやホームページでクリーニング前後の写真や工場内の様子を公開していますので、ぜひご参考までにご覧ください。

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●佐藤