全体染めで起こりえる症状について

2023.01.19

今シーズンは急に寒くなりましたので、急いでクローゼットからダウンを引っ張り出したけど、いざ着ようとしたらいつの間にか色あせていて外には着て出られない……PROSHOP HIRAISHIYAにはそんなご相談も多く寄せられます。

色褪せたダウンは全体染め変えで生き返る可能性があり、PROSHOP HIRAISHIYAでは過去に多くのダウンの染め変えを行ってきました。

そんな便利な全体染め替えですが、ダウンウェアの状態によって様々な症状が出てくる可能性がございます。今回はどのような状態のときにどのような症状が出る可能性があるのか、状態によって染まり方にどんな影響がでるのか等を簡単にご紹介させていただきます。

※今回ご紹介するものはあくまで一例です。この記事の内容に当てはまらない場合もございますため、ご留意ください。

1.ダウンの素材・構造

ダウンを染めるには様々な要素が関係してきます。その為、染める前には細かい確認が必要です。まずはダウンウェアの素材や構造から確認していきましょう。

1-1 生地の素材は何か?

全体染め変えを行う場合、まずは素材を確認します。その素材によって染料を変えたり、素材によって注意事項が変わったり、染まりにくい素材もあったりするからです。

例えば綿やナイロンは染まりやすい、ウールは染まりやすいけど風合いが変わる可能性がある、ポリエステルは染まりにくく染めたとしても色ムラが出やすい、アクリルはほとんど染まらない、革は縮んで硬くなってしまう、等々。素材によってかなり違いがあります

1-2 ファーは取り外しできるか?

ファーには取り外し出来るものと出来ないものがあります。取り外し出来ないタイプのファーが付いているダウンは全体染め変えができません。PROSHOP HIRAISHIYAでは高温漬け込みによって染め直しを行います。ファーは一度でも濡らしてしまうと毛が傷んで破損してしまいます。また、リアルファーは毛が付いている根元の革が硬くなったり縮んだりしていまいますため、PROSHOP HIRAISHIYAでは染め変えを行っていません。

取り外しが可能なタイプのファーでも、上記のような理由がありますためファーに付いている生地は染め変えを行わず、色はそのままの状態です。

1-3 ゴム・シリコン等は使われているか?

ゴムやシリコン、接着剤が使用されている例

ダウンウェアに使用されているのは生地・革だけではございません。ロゴマークや文字、ファスナーカバー等にはゴムやシリコンのような素材が使用されていることもあります。

ロゴマークや文字などは接着剤で付けられているだけのこともあり、全体染めだけでなくクリーニングでも剥がれて取れてしまう可能性があります。

ファスナーカバー等縫い付けられているものに関しては剥がれて取れる心配はないのですが、少しでも劣化があった場合は亀裂、ひび割れが起こりボロボロになってしまうこともあります。

2.色の染まり方

全体染め変えにおける色の染まり方は、元々の色や傷の有無等、生地の状態によっても変化します。特に色ムラになる可能性が高い3つをご紹介します。

2−1 変色

ダウンウェアの染め変えは、だいたいが色あせや変色が出てしまった場合に依頼される方がほとんどです。そうすると自然に全体染め変えを行うダウンウェアのほとんどに変色箇所が見られます。

この変色箇所と元の色の部分では染まり方が異なります。似たような色や同じ色で染めた場合、色の染まり方が薄い変色箇所と問題なく染まった元の色の部分で色の濃淡が明確になってしまい、変色箇所が余計に目立ってしまうということもあり得ます。その為、PROSHOP HIRAISHIYAではできるだけ濃い色での全体染めをお勧めしております。濃い色で染めれば、変色箇所と元の色の部分の染まり方が異なり色ムラとなったしまった場合でも色の濃淡が目立たない効果が期待できるからです。

2−2 シミ・汚れ

シミ・汚れがあるような場合も、その部分と何もない綺麗な部分とでは染まり方が異なります。PROSHOP HIRAISHIYAでは全体染め変えの前にクリーニングを行いますが、そのクリーニングでも落ちなかったシミ・汚れは色ムラの原因となる可能性があります。

シミ抜きでもクリーニングでも落とせないシミ・汚れ、範囲が広すぎて対応できない雨染みなどにお悩みで全体染め変えを行った場合でも、そういったものは色の濃淡・色ムラとして残る可能性があります。

これは極端な例ではありますが、シミ・汚れは目視で確認することが難しいものもあり、クリーニング・全体染め変えによって表面化してしまうこともございます。

2−3 傷

傷とわかるものに関しては修理することをお勧めいたしますが、ものによっては変色やシミ・汚れと判別が付かない場合があります。変色・シミ・汚れを何とかしたくて全体染め変えを行ったとしても、それが傷だった場合は色が入りにくいです。

傷とは少し違うかもしれませんが、例えばカナダグースダウンに出やすい「白化」という症状は擦れが原因で起こります。擦れは生地の表面が擦れて劣化しつつある状態であり、ひどくなるとテカリも出始めます。このテカリが出た状態になってしまうと、部分染めでも全体染めでも色を入れることは難しくなります。テカリが出る前の状態であればある程度の色補修が可能です。

このように、傷の程度によっても色の入り方が異なります。

3.穴・傷・ほつれ・その他劣化

擦れ・ほつれでボロボロになっている袖口

全体染め変えはダウンウェア全体にかなりの負荷をかけますため、衣類に穴や傷、ほつれや劣化があるとそこが悪化してしまうこともあります。その為、傷や劣化部分がある場合には全体染めの前には修理がお勧めです。※PROSHOP HIRAISHIYAでは原則としてご要望が無い限りお客様へ修理等のご提案は行っておりません。事前にご自分の衣類がどのような状態なのかしっかりと確認することをお勧めいたします。

3−1穴・傷・ほつれ

生地に穴・傷・ほつれ、破れなどがある状態で全体染め変えを行うと、穴・傷などが広がってしまう可能性が高いです。小さな穴であればそこまで警戒する必要はないと思われますが、1、2cm以上の物であれば事前に修理をしておいた方が安心です。

3−2 ゴムの劣化

ゴムは少しでも劣化していると全体染め変えの際に伸びきってしまう可能性があります。特に袖口ゴムは着用中の使用頻度も高いため劣化しやすく、当社の全体染め変えでも伸びきってしまった例がいくつかございます。特に自分ではゴムが劣化しているという認識がなくても、着用していれば緩やかに劣化は進んでいきます。ご不安な場合は全体染め変えの前にゴムの交換をお勧めいたします。

3−3 ワッペン・タグ・ボタンのほつれ

ワッペンやタグ、ボタンの糸にほつれがあると、全体染め変えの際に取れてしまう可能性があります。ワッペンやタグは染めたくない部分として取り外す方が多いため必然的に付け直すことになりますが、ボタンの取り外しを行う方は少ないです。これは全体染め変えだけでなくクリーニング時でも取れてしまう可能性がありますため、事前にしっかりとご確認をお願いいたします。

まとめ

全体染め変えは様々な要素が関係しています。予め自分のダウンがどんな状態なのか確認することが大切です。そこでどんな状態なのか明確にわからなかったとしても気になる箇所をご申告いただければどんなご対応が可能なのか検討することができます。

全体染め変えをご希望ではなくとも、一度ご愛用のダウンをじっくりと確認するお時間を取ってみるのもいいかもしれませんね。