ダウンジャケットとクリーニングの歴史について

2024.05.08

厳しい寒さから身を守る「ダウンジャケット」。たゆまぬ努力と高い技術力で今も進化し続けています。ダウンジャケットを主軸に展開するブランドも数多くあり、各ブランドの魅力特徴は多岐にわたります。これらの魅力を維持するのに欠かせないのが、「クリーニング」です。清潔な状態を保ち、より着心地良く長く着続けるためには定期的なメンテナンスが欠かせません。

さて、本日は私たちの冬の暮らしを支えるダウンとクリーニングの歴史についておはなしさせていただきます。

1.ダウンジャケットが生まれたきっかけ

ダウンジャケットが誕生したきっかけはおよそ80年ほど前にさかのぼります。ある男が、真冬に釣りに出かけました。ですがこの道中彼は道に迷ってしまい、低体温症に陥ることに。凍死寸前まで追い込まれるも何とか一命をとりとめることが出来ました。この出来事を受け、彼は冬の寒さにも耐えうる服を作ることを考えます。水鳥の胸元の羽毛に着目し、ヒントを得ます。サンプルとして中にダウンを入れ、着用を試みますが、ダウンが徐々に下に偏ってきてしまいます。試行錯誤を繰り返し、ようやく誕生したのが「ひし形」にキルティングを施したダウンジャケットでした。このキルティングは、均等な間隔で縫う事で中のダウンがあちこちに偏ることを防ぐために施すものです。このキルティング製法をもとに、1936年アメリカで特許を取得しました。

このヒントとなった「胸元の羽毛」は水鳥にしか生えていません。いわゆる陸鳥と呼ばれるカラスやハトにはこういった羽毛は生えないのです。タンポポの綿毛のような見た目をしていて、とても軽いです。フランスやポーランドにチェコ、ハンガリーなどが主な産地ですが、その中でもポーランドやハンガリーはダウンの優良産地とされています。このダウンの「質」には生育環境が大きく影響しています。鳥だけでなく生き物全てに言えることかもしれませんが、十分なエサを食べ、広大な敷地でのびのびと育てられた生き物はストレスも少ないです。質の良いダウンが採取できる国は、広大な土地を有していることがほとんど。繊細で質の良いダウンは、高級ブランドダウンにも多く使用されています。

2.革新をもたらした人気ブランド

登山用の衣類としての印象が定着していたダウンジャケット。ファッションとして認識、取り入れられたのは1980年代ごろから。無骨、シンプルで機能性に特化したデザインだったダウンジャケットに革新をもたらしたのは、「モンクレール」でした。もともと、登山用品の製造・販売を行っており歴史のあるブランドではありましたが、1960年代にスキーウェアがオリンピックの公式ウェアに選ばれたことが、さらなる性能の信頼につながったのではないでしょうか。

これ以降、フランスやイタリアを中心にダウンジャケットをファッションアイテムとして取り入れる風潮が生まれました。ファッション都市である国々で瞬く間に受け入れられたダウンジャケット。その波はもちろん日本にも。木村拓哉さんがCMでモンクレールダウンを着用したことで爆発的人気をもたらしました。GUCCIやmiumiuでデザインを手がけてきたアレッサンドラ・ファキネッティ氏がクリエイティブディレクターとして就任すると、ダウンジャケットの「ラグジュアリー化」が加速。モンクレールの人気を受け、他のブランドも続くようにファッションに取り入れやすいエレガントなデザインを生み出しました。

この人気は今も健在。当社でお預かりするブランドダウンの大半をモンクレールが占めています。モンクレールダウンの素晴らしい機能性とデザインは、老若男女問わず虜にしてしまうのです。これからのコレクションの発表も楽しみですね。

3.クリーニングの歴史

さて、続いてはクリーニングの歴史のご説明に移ります。ダウンの歴史も深く、濃いものですが、クリーニングはさらにもっと長い歴史があります。大きな節目ともいえる3つのタイミングと、現代のクリーニングについてお話していきます。

クリーニングの歴史はとても古く、紀元前2500年前にさかのぼります。エジプトの墳墓の壁画には何人もの人が選択をしている様子が描かれています。汚れを落とすため、石のようなものに洗濯物を叩きつけていたり、水を絞るために棒のようなものに巻き付けてねじったりしています。このころは当然機械などはありませんから、人の手だけで作業をおこなっていました。古代エジプトで使用されていた筆記媒体「パピルス」では天然ソーダに動植物の脂肪を熱したものを加えるという事が記されていました。この作業によって石鹸が完成します。

19世紀ごろ、すでに西洋ではおしゃれで繊細なドレスがファッションの主力となっていましたが、素材やデザインが非常に複雑でした。踏んだり叩いたりというような、力ずくともいえる作業工程は、装飾の多いドレスの性質には合わなかった為、クリーニング業に変わって仕立て屋が手作業で1つ1つ洗濯をしていました。ここでいうクリーニング業はいわゆる水洗い(ウェットクリーニング)ですが、手作業はとても時間がかかります。どれだけ腕のいい職人でも3時間はかかると言われるほど。ですが、これだけ時間をかけ丁寧に作業しても「完璧」とは言えませんでした。風合いの変化、型崩れ、傷みといった問題が山積みでした。

そんな中、クリーニング業にとある出来事が革命を起こした有名なお話があります。1820年ごろ、フランスの仕立て屋のジョリーがランプのオイルをテーブルクロスにこぼしてしまいました。それを見るとクロスについていた汚れが落ちていたのです。この発見はドライクリーニングの原点となりました。これにより徐々にドライクリーニングが浸透していきました。これまでの水洗いの問題点が最小限に抑えられるうえに、水ではなかなか落としきれない皮脂などの油汚れを取り除くことが出来るようになりました。

日本にドライクリーニングが広まったのは明治時代。生活の洋風化の流れに合わせるように、洋服を洗うクリーニング方法として各地に広まっていきました。フランスへ渡った日本人がその技術を持ち帰り、クリーニング店を開きました。他の文化同様、こういった近代的な事柄は商船などが頻繁に行き来する港から伝わっていきました。当時クリーニングの技術は「職人の仕事」として認識されていました。そのため、クリーニング業を志した人々は先人に教えを請い、技術を習いその後独立するというのが一般的な流れでした。イメージとしてはお寿司の職人さんと似たようなものですね。

長い歴史のあるクリーニング業。プールのようなものの中に衣類を入れ、足で踏んで汚れを落としたり、棒でたたくなど若干の変化はありましたが、現代のような機械を用いて洗うという形に変化したのは20世紀に入ってからのことでした。

これまで人力で行っていた水洗いも、このころにはモーターで回す仕様の洗濯機が登場し始めました。さらには脱水機がついたものも登場し、さらにはこの脱水機も自動で機能する洗濯機(当時全自動と呼ばれていたもの)が普及しました。洗濯機の開発は重労働からの解放、家事労働の負担の削減に大きく貢献してきました。ご存じの通り、1950年代の日本でも「三種の神器」の一つとして販売されました。

当時ドライクリーニングに使用していた溶剤は揮発性・引火性の高いものでした。そのためできる限り密閉性を重視した機械が使用されていました。機械の設置にはスペースを要しますし、防火設備の用意も必要でした。一般の町のクリーニング屋さんで扱えるようなものではなかった為、ドライクリーニングは外注(処理工場)に頼っていました。複数の洗濯屋さんの衣類を預かり、処理工場でまとめて洗い・乾燥まで施されたのち、お店に返却されます。その後洗濯屋さんが仕上げを行い、お客さんへ返す、というような流れになります。この工程を聞くと、だんだん馴染みのあるクリーニング屋さんのイメージになってきますよね。

現代のクリーニング店も、いわゆるチェーン店などでは地域各所にある店舗から衣類を集荷し、大きな工場でまとめて洗濯を行っています。ドライクリーニング浸透当初は揮発系が高く臭いも非常に強い溶剤が使用されており、乾燥や仕上げを施した後もにおいが残っていたといわれていましたが、現代の溶剤はしっかり乾燥がされていれば衣類に臭いは残らないものに進歩しています。また、洗濯・乾燥を施した後はそのままの流れで工場内で仕上げ(アイロンがけ)を行うのがほとんどです。あらゆる作業の自動化が進み、より多くの衣類を効率よくクリーニングすることが出来るようになりました。

4.まとめ

本日はダウンとクリーニングの歴史についてご説明させていただきました。それぞれ、長い歴史の中で人の知恵と工夫を駆使して成長してきました。ですが現在も新素材が続々開発されたり、洗濯する機械や溶剤の性能が上がったりと進化は続いています。そして、この進化はこれからも続いていきます。

時代の流れや変化に合わせて、我々クリーニング店も柔軟に適応し、ついていかなければいけませんね。お客様からお預かりする様々なダウンを通して、自分たちの技術を向き合うとともに、ご満足いただけるサービスが提供できるよう努めてまいります。

PROSHOP HIRAISHIYAでは、モンクレールをはじめとする高級ブランドダウンのクリーニング取り扱い実績が50万着以上あります。それぞれの素材や汚れの特性を踏まえながら最適な方法でダウンクリーニング・染み抜きを行っております。注文方法や現在のダウンについてご不安な部分、ダウンクリーニングの内容について確認したいことがある場合は無料カウンセリングや電話注文も承っておりますので、下記リンクよりお気軽にお問い合わせくださいませ。SNSやホームページにてダウンクリーニング中の様子やダウンクリーニングと併せてオススメしているオプションの紹介なども行っておりますので、ぜひ参考にご覧ください。

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また、多くのお客様にネット注文をご利用いただいております。ご自宅でスマホやパソコンから必要な情報をご入力いただきますと、注文完了となります。集荷日時をご指定いただければ、ヤマト運輸さんが、梱包用の段ボールを持参してお客様のご自宅まで引き取りに伺います。当社到着後、作業中の進捗状況等はメールにて都度ご案内させていただいております。また、仕上がり後のダウンもヤマト運輸さんより配送されます。ご自宅で注文から受け取りまでの一連の作業が完結できるシステムとなっております。

注文後のダウンクリーニングの流れについて、わかりやすく説明させていただいた動画がこちらになります。是非併せてご覧ください。

【YouTube】注文から納品までの流れ

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