レザー・ファーのダウンクリーニングについて

2024.04.11

皆さんこんにちは、【PROSHOP HIRAISHIYA】です。

通常の衣類と比較して、取り扱いの難しい素材の1つである皮革。レザーやファーが使用されているダウンはより一層、高級感のある印象を持たせてくれます。ブランドやデザインによっては取り外しが出来たりするものも多く登場しています。シーンに合わせてコディネートがかえられるのも魅力の一つですよね。

ですが、「どうやって洗うのか」「クリーニングに出せるのか」、などお手入れに少し困ってしまったという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。本日は、レザーやファーを使用したダウンのクリーニングについてお話しさせていただきたいと思います。

1.レザー・ファーの特徴

革の歴史は20万年前にもさかのぼると言われています。当時、動物の皮や骨などの部分は食べることができないため、捨てられていました。ですが徐々に皮は敷物や雨風をよけるものとして、骨は狩りで捕まえた動物の皮をはぎ取ったり、肉片をそぎ取るための道具として暮らしの中で有効活用されるようになっていきました。旧石器時代などは氷河期真っ只中、寒さに耐える工夫が必要でした。そのため毛皮は防寒対策としても利用されました。また、狩りの際に利用する履物や馬具などとしても用途を広げていったのです。

こういった加工を施す際、皮が固くなるのを防ぐため干す前に叩いたり揉んだりというような工程が踏まれていました。この工程を「鞣し」と呼び、それを終えたものを「革」と呼びます。

前述した通り、生きるため・暮らすために体を守る役目を果たしていた毛皮。それから徐々に時代が移り変わり、今ではファッション・デザインの1つとしての役目を持っています。特にヨーロッパでは日本で流行るよりも前から、毛皮を取り入れた服を着ていました。これはテレビなどで目にする肖像画などからもうかがえますが、王侯貴族たちは富や権力の象徴として毛皮をまとっていたことが影響しています。そういった背景から、それ以降の時代もヨーロッパを中心にレザー・ファーを使用したファッションが受け入れられていきました。

日本も、ヨーロッパに遅れてではありますが、ファーなどがファッションに取り入れられる時が訪れました。それがバブル期です。世の女性の多くが毛皮のコートを身に着けるようになりました。この時、とりわけブームになったのがミンクの毛皮でした。この圧倒的なブームが起因となり、日本でも積極的に毛皮を使ったファッションが広まっていきました。

日本のファッションに取り入れるまでに時間がかかった原因はその「デリケートさ」にありました。日本はヨーロッパに比べ暖かく、湿度の高い気候です。暖かい環境は虫も生息しやすい環境。害虫による食害被害が劣化を促してしまうのです。くわえて、雨や水に弱いのでシミになりやすくカビが発生しやすい特徴があります。年間降水量の平均がヨーロッパの倍以上ある日本では、生産・販売するにあたっての管理の面でハードルが高く、なかなか取り入れにくかったのではないかと考えられます。

2.クリーニング店目線で見るレザー・ファー

注文の際「ファーも一緒に洗えますか」という質問をいただいたり、中には「他店で断られたことがあったためファーを取り外してきた」という方もいらっしゃいます。【ファーは洗えないもの】として認識されている方が多いのです。という事で、ここからは我々クリーニング店でのレザー・ファーの取り扱いについてご説明していきます。

レザーダウンは部分的にレザーを使用しているものと、全体にレザーを使用しているタイプがありますが、洗い方もそれぞれです。

ワッペンや引手だけなどワンポイントのみの使用であれば、該当の箇所だけパーツを外して本体のみウェットクリーニング、レザーは別個で洗い最後にまたつけなおします。

前面にレザーが使用されたダウンの場合は、完全手洗いでクリーニングを行います。しわになるのを防ぐため、細心の注意を払いながらクリーニングしていきます。

ファーはダウン本体と比べてなかなか汚れに気付きにくいですが、空気中に舞っている埃が絡んだり、排気ガスを吸ったりして実は汚れが蓄積しています。ファーは、我々が通常のダウンクリーニングで行っているウェットクリーニングでは対応が出来ません。これは毛皮が傷み、劣化・破損につながる可能性があるためです。そのため、ファーはダウンと別でドライクリーニングをするようになります。

くわえて、ファーは熱に弱いため乾燥機に入れての乾燥は厳禁。一度収縮してしまうと元の状態に戻すことは困難になります。また、長時間紫外線に当てることも、劣化の原因となってしまうため、直射日光の当たらないところで自然乾燥させます。仕上げに1つ1つ手作業でブラッシングを行っていきます。専用のブラシを使って寝てしまった毛を起こすようにふんわりボリューミ―に仕上げます。

ブラッシング待ちのファーたち

「毛が抜けてしまう」などの症状が出てしまっている場合はもうすでにクリーニングでは対処が難しくなります。毛が抜けてしまうという事は毛が生えている革そのものが劣化している状態。こうなってしまうと、クリーニングの最中にも毛が抜けてしまう可能性があります。当社でお預かりするファーの中にも、既に毛が抜け始めてしまっているファーが届くことがありますが、程度によって作業が難しいため、クリーニングを断りさせていただくケースもございます。

3.フェイクファー、人工皮革も洗える?

昨今は動物愛護の観点から、リアルファーを使用している衣類は減少傾向にあります。それらの代わりとして登場しているのが化学繊維で作られている「人工(合成)皮革」や「フェイクファー」です。服だけでなく小物類でも活躍する素材ですが、本革やリアルファー同様、クリーニングに困っている方も多いのではないでしょうか。

人工皮革は本革やリアルファーと比べ、比較的リーズナブルな価格で楽しむことが出来ます。生地のベースとなる基材にポリウレタン樹脂を塗り、加工を施して本物そっくりの見た目に仕上げています。

  • 人工皮革 基材に「特殊不織布」以外を用いたもの。
  • 合成皮革 基材に「特殊不織布」を用いたもの。

「特殊不織布」とはランダム三次元立体構造を有する繊維層を主とする基材に、ポリウレタン(またはそれに類する物質)を含浸させたもののことです。

お手入れもしやすく、発色もきれいですが、おおよそ製造から3年ほどで劣化が現れ始めます。劣化とは主にひび割れ・剥がれ・シワの発生です。使用状況によって生じるタイミングや範囲には個体差がありますが、これらは素材の特性上どうしても避けられないものです。クリーニングを施して防ぐというようなことも不可能です。本革に似ているので、長く使えると思っていたり、そもそも人工皮革だと知らずに買ってしまったりと、消費者の誤解などでトラブルが起きやすい素材です。加えて注意が必要なのが「製造から」3年、というところです。「購入して間もないのに」という声もたびたび聞かれますが、あくまで基準は製造からとなりますので、販売のためにお店に並んでいる期間も、3年のうちに含まれてしまうわけです。ここで認識が食い違ってしまうとトラブルに発展してしまうのです。

フェイクファーは長さにばらつきが無かったり、カラーバリエーションが豊富なのも特徴の一つです。「エコファー」という言葉も聞くようになりましたが、こちらは「フェイクファー」と同じ意味です。どうしても「フェイク」と聞くと偽物という印象を持ちネガティブなものとして捉えられがちです。それに対し「エコ」と聞くと環境によく、ポジティブな意味としてとらえることが出来ます。こういった背景から、「エコファー」の呼称が浸透しつつあります。

本物のファーと比較して耐久性がありますし、水にも強いためカビも発生しにくいです。化学繊維であるため食害もふせぐことができます。そしてフェイクファーの需要が高まる中注目されているのが日本産のエコファー。よりリアルファーに近づける高い技術力が評価されています。中でも有名なのが、和歌山県の老舗織物メーカー。企業との共同開発により生まれた糸によって実現された、滑らか且つボリューミー、それでいてリアルファーより軽い仕上がり。海外ブランドからの注文も増加。フェイクファーの益々の進歩に期待したいですね。

PROSHOP HIRAISHIYAでは、本革・リアルファーはもちろん、合成皮革やフェイクファーのクリーニングも承っており、それぞれの特徴に合わせたクリーニング方法で作業をおこないます。お手持ちのダウンの素材がわからなかったり、クリーニングに出せるものか分からない場合でも、当社のスタッフが確認させていただきますのでご安心ください。

人気ダウンブランド「モンクレール」ではファーフリー宣言を行い、リアルファーの使用を昨年秋冬に登場したコレクションで最後としました。「カナダグース」ではすでに2022年をもってファー製品の生産を終了しています。これらの取り組みを受け、ほかのブランドでも同様の取り組みが進めばこれからますます、レザーやファーを使ったデザインが減っていってしまう可能性もあります。そうなればなおさら現在着用しているダウンは綺麗に長く、大切に着用していきたいですよね。

4.まとめ

本日はレザーとファーのクリーニングについて、ご紹介させていただきました。クリーニング店によっては取り扱いしていないこともある素材ですが、正しい方法でクリーニングをおこなえば、きれいにすることが出来ます。これまでクリーニングに出せずにいた方も、ぜひ一度ご相談いただけますと幸いです。

この記事を通してお伝えしたいことは以下の三つです。

  • レザー・ファーはとてもデリケート
  • お手入れ方法を間違えると修復は困難
  • PROSHOP HIRAISHIYAならクリーニングが可能、実績多数

PROSHOP HIRAISHIYAでは、モンクレールをはじめとする高級ブランドダウンのクリーニング取り扱い実績が50万着以上あります。それぞれの素材や汚れの特性を踏まえながら最適な方法でクリーニング・染み抜きを行っております。注文方法や現在のダウンについてご不安な部分、クリーニングの内容について確認したいことがある場合は無料カウンセリングや電話注文も承っておりますので、下記リンクよりお気軽にお問い合わせくださいませ。SNSやホームページにてクリーニング中の様子やクリーニングと併せてオススメしているオプションの紹介なども行っておりますので、ぜひ参考にご覧ください。

また、多くのお客様にネット注文をご利用いただいております。ご自宅でスマホやパソコンから必要な情報をご入力いただきますと、注文完了となります。集荷日時をご指定いただければ、ヤマト運輸さんが、梱包用の段ボールを持参してお客様のご自宅まで引き取りに伺います。当社到着後、作業中の進捗状況等はメールにて都度ご案内させていただいております。また、仕上がり後のダウンもヤマト運輸さんより配送されます。ご自宅で注文から受け取りまでの一連の作業が完結できるシステムとなっております。

注文後の流れについて、わかりやすく説明させていただいた動画がこちらになります。是非合わせてご覧ください。

【YouTube】注文から納品までの流れ

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